住宅の外壁が、なぜ漆喰なのか。

先ずは今の住宅展示場の姿を。


岩手の住宅展示場の外壁は漆喰仕上げ
外壁を剥がし、現在のスペックの窓と断熱レベルの施工を終え、
再度塗り壁下地用外壁材を張って、
最後の仕上げを漆喰で仕上げたばかりのほやほやです。

断熱リノベする前も外壁は塗り壁でしたが、
以前の塗り壁材は国産メーカーの樹脂系だったものでした。
それを今回は、現在標準となっているヨーロッパ直輸入の漆喰に、
そしてテストケースとして新たな色合いのものを使ってみました。

この外壁の漆喰仕上げまでたどり着いたことも、
振り返ってみれば結構長い道のりだったかも(笑

今だから笑えるけど、それなりに紆余曲折はあったのですよ^^

岩手の住宅の外壁を漆喰仕上げとするきっかけ

ずっと以前から施主さんからの要望で外壁の塗り壁仕上げはあったものの、
それほど多いわけではなく、
十数年前なら当社も仕上げ済み外壁材の方が一般的でした。

けれど、ある築9年の家でのこと。
外壁のコーキングの経年劣化が原因で、
10センチ位の範囲で雨水を吸い込んだ外壁材の一部が傷んでしまう事例が発生したのです。

傷んだ外壁の部分一枚だけを交換しましょう、
メーカーに同じ外壁材を注文しておきますので。

と打合せして、その日のうちに品番を記入しファックスで手配。

と、ここまでは良かった。
いつもなら1、2営業日で返事がくる処なのに、なぜかその時はすぐに返事は来ず、
外壁1枚くらいの注文だから手間取っているのかも?・・・
くらいに思っていた数日後、やっと返信のファックスが届いたのを見て、

その内容に、

まさがだべ!?

と、我が目を疑ってしまった。

ご依頼の品番はすでに廃番となっており、注文に応じることは出来ません。
みたいな返信で、担当者に即座に電話を入れ、

廃番て、どういうごどだべ?

築9年だよ、9年!たったの9年!

それで廃番てぇごどって、そんなごどってねえべよ。

万が一廃番だとしてもさ、メンテ・アフター用に倉庫にとってあるもんでねえの?

と食い下がるも、

廃番となれば一切の取り置きもしないんですよ。

というようなシビアな回答で電話は終わった。

(ここではこの時の解決方法は脇に置いといて、、)

9年、9年、9年、、9年だべ、
日本の建材は一体どうなってんだよ?
そんな自問自答しながらの悶々とした日が続き、

よくよく考えてみると・・・
毎年カタログは新しく更新され、毎年どんどん新柄が登場していたべ。
その新しい外壁のデザインや質感の向上を楽しみにしていたし、
メーカーのスピーカーよろしく機能を説明したりしていたのはオレ自身、、

まったく愚かだったことに気付くとほんと情けなくて。。

新しいものが出た分、その数と同じだけ外壁材が廃番となる、
そう考えなきゃならなかったのだ。

もしかすれば、採用した外壁が翌年のカタログから消え、
廃番ですよ~
なんて最悪なこともあり得る話だべ。

そう思い始めたら、今のままでいいわけがないし変えないと。
てことで、これまで見て来た欧米を参考に、
徐々にでもいい、塗り壁仕上げにシフトして行こうよ!
という結論に至ったのです。

それからは国産の塗り壁材をいろいろと試しながら経過を確認するようになります。
住宅展示場を建築した時期はその過程だったように思います。

その後経験を踏まえて
新しいわけでもないけど、古くもならない塗り壁材を、
ということで、現在のスペイン漆喰に辿り着くことになります。

恥ずかしい話、それまで漆喰って素材があるのを知りながら、
使っていないので良くは知らないというのが本当の処で、
それが知れば知るほど、技術に左右されるものだということがわかってくる。

難しいノウハウも不要で、誰でもきれいな仕上がりに、
なんて代物ではなかったのです。

岩手で健康に暮らすために採用しているスペイン漆喰とは。

例えば、漆喰の主素材となる消石灰。
スペインで見学させてもらった時のことを紹介すると、

漆喰 (1)
これが消石灰で、よく鳥インフルエンザが流行ったりすると、
鶏舎やその周辺に撒いているものと同じ。

これがどういう工程でできるのかというと、

漆喰(2)
消石灰になる前の原料となるのは、山から切り出して来た石灰石から始まります。

ここからこれらの石を焼く工程へと移る。

漆喰(3)
焼くのは写真のような焼成炉。
丸い所が薪をくべる入り口で、実際に焼く時はその上の開口された部分を石と石灰で塞ぎ、
上から石灰石を釜に入れて焼くという手順なんだそうです。

釜に近づき覗いてみると、

漆喰(4)

漆喰(5)
焼成炉の大きさ深さが大まかにでも想像できるでしょうか。

ここで1000℃以上にもなる温度で焼き上げ自然に冷えるまで数か月待つと、
それが生石灰になる。

生石灰が冷えてから、炉の塞いだ箇所を開け掻き出したもの、

漆喰(6)
これが生石灰になります。

そしてこの生石灰に水を作用させるべく、

漆喰(7)
水の入ったタンクに入れる。

漆喰(8)
この写真は生石灰を水タンクに入れた直後の様子。

ここで危ないのでタンクから離れることになります^^;

漆喰(9)
ご覧のように生石灰と水が反応すると、火傷するほどの熱が発生しモクモクとした湯気が。
これはこれで眺めていると、妙に感動するシーンだったような気がします。

生石灰の石にタンクの水が作用すると石が粉になるわけだけど、
水に溶けるのではなく化学反応によって粉になるのです。

タンクの中ではその変化を見れないので、
大人のための理科実験をしてくれたものがあるのでそれを。

漆喰(10)
生石灰の石に水をぶっかけ、しばらく眺めていると、

漆喰(11)
水と反応して、何もしなくても生石灰が自ら粉々になってしまうのです。
この粉が消石灰の状態になります。

この反応を動画で撮ったものがあるので見て下さい。

この時に発する石灰の温度は100℃を超えるというから、
この熱でカップラーメンのお湯位ならできるかもしれません。

パックの食品とかで紐を引っ張ると高温の熱で出来上がり!
ってのをご存知かと思いますがあれと同じ原理です。
私も初めて知った時は、これだったのか!?でしたから^^;

このような千年以上も続く伝統的な消石灰の製法が、
現代にまだ残っているというのが凄い。

漆喰こそが、古くから受け継がれながら未だに新しさを失わない、

魅力的な素材ではないかとこの時思ったものです。

漆喰(12)
この写真が、漆喰の基となる消石灰までの物語を知った後の満足気なオッサンです。

以上が消石灰までの工程でした。

さて、

ここからが住宅の耐久性に関わるぺっこマニアックな漆喰の話。

日本の漆喰は、消石灰につなぎ材として糊とかスサ等、
有機的なものを混ぜて漆喰材としているのに対し、
ヨーロッパの漆喰は消石灰に大理石を混ぜています。

漆喰(13)
これが大理石を切り出している山。

漆喰(14)
切り出された大理石たち。

漆喰(15)
近寄って見ると、確かに大理石だということが分かりますね。
大理石も石灰岩がマグマの熱などにより変成作用を受けて変化した
結晶質石灰岩と言われるもので基は一緒なんだとか。

使われる大理石がビアンコカララという白っぽい大理石に似たような風合いなのは、
きっと白っぽくないと消石灰の白色に馴染まないからなのではないかと。

漆喰(16)
写真は、大きなゴッツイ大理石を何段階かを経て、
順に細かいものにして行く過程でのサイズ。

最終工程で粉に近い小さなサイズまで細かくし、
それを消石灰に混ぜたものが漆喰材となっているのです。

何やらこの粒の形状の作り方も企業秘密なんだとか、
いろんな過程でノウハウが積み重なってできているものなんですね、
この過程を知らないと、私も分からなった世界です、

それにしても・・・

私的には、なんと贅沢な!

粉にせず、大理石そのままで利用できたらいいのに・・・

と思ってしまいます(笑

これまで大理石と言うと、床に貼る大理石とか、
大理石カウンターとか高価なものと言うイメージでしたからね。

このように、
私たちが使用している漆喰は消石灰に大理石を混ぜ込んだ素材であり、
そこにヨーロッパのノウハウと私の師匠のアイデアを加えた施工方法で
仕上げています。

住宅の外壁に塗られ乾燥したら住宅の完成!
というのが一般的な塗り壁仕上げかと思われますが、
ところがどっこい、漆喰仕上げの完成はもしかすれば何十年後?
と言えるかもしれないのです。

塗られた漆喰の主成分である消石灰、
空気中の二酸化炭素と反応しながら何十年という歳月をかけ、
元の姿である石灰石という石へと静かに戻って行くのです。

そして、

いつか我が家の壁は石になる。

こういう小さなロマンに想いを馳せられる時間も、

漆喰の魅力なのかもしれません。

家の外壁も内壁も漆喰でつくる岩手の注文住宅メーカーなら。

4 件のコメント

  • 今回の内容、全く知りませんでした。
    壁がいずれは石になる。なんか素敵ですね。
    問題はコストでしょうか?

    • 壁とか床とか部位や目的によっても違いますね。
      もし何か気になることがあるようでしたらご相談ください^^

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