後悔しない二世帯住宅を建てるポイント

親と子、そして孫がお互いに見守られながら安心して暮らせる生活を求めて二世帯住宅への関心が高まっています。二世帯住宅は、育児の手伝いや親御さんの老後のサポートなど、お互いに寄り添い合いながら暮らせる生活を実現してくれます。
ここでは、そんな二世帯住宅を建てるために失敗しないポイントをご紹介いたします。

二世帯住宅のメリットとデメリット

二世帯住宅を検討する前に、そのメリットとデメリットをおさえておきましょう。

【二世帯住宅のメリット】

1.安心感

二世帯住宅を建てる最大のメリットと言えるのは何といっても安心感です。いざという時に頼れる存在が身近にいれば大きな安心を得られます。そして食卓を囲み、家族みんなで過ごす団らんのひと時は子育てにも良い影響を及ぼすでしょう。 さらに夫婦での旅行や買い物など、家を空ける時にも誰かが家を守っていてくれれば留守中の不安も解消されます。

2.資金の節約

親世帯と子世帯がともに生活することで光熱費や食費等、様々な生活資金を節約できます。そして二世帯住宅は親世帯と子世帯がそれぞれ別に家を建てるより建築費用も抑えられます。さらには一定の建築基準をクリアすれば相続税の減免も可能です。限りある資金を大切にし、余裕のある豊かな生活を実現する為にも二世帯住宅はおススメです。

3.子育てと介護

共働き世帯が増加する中、子どもを預かってくれる親世帯の存在は子育ての大きなサポートとなります。一方、親世代にとっては老後の心配が和らぎ、介護や見守りなどの支援が受けやすいメリットがあります。

【二世帯住宅のデメリット】

1.プライバシーの確保

親と子の2世帯が一つ屋根の下で暮らすことは、にぎやかな反面、プライバシーの確保が難しくなります。確保すべきプライバシーがどの程度になるのかをしっかり把握し、どのような二世帯住宅が自分たちの生活に適しているのかのをあらかじめ検討しておきましょう。そして、プライバシーの確保が難しいというデメリットを回避するためには、自分たちの建てたい家、建てるべき家を実現できる注文住宅が最適です。

2.価値観やライフスタイルの違い

夫婦といっても元は他人同士、その上、世代の異なる2世帯が同居となると価値観のズレが出るのは必然です。さらに、食事やお風呂の時間など生活サイクルの違いも生まれてくるかもしれません。後悔しない二世帯住宅を建てるためには、人任せにせず、綿密な話し合いが必要です。

3.建築費用

二世帯住宅の建築費用は通常の一戸建てよりも設備が多くなるため高額になることがあります。特に完全分離型の二世帯住宅はキッチンや浴室などが2世帯分必要となる為、比較的に建築費用がかかります。どこまでプライバシーを確保するかによって建築費用は大きく変わります。

二世帯住宅を建てる前に

二世帯住宅を建てる前に必ず世帯間・家族間での綿密な話し合いを行いましょう。細かな点をあらかじめ決めておけば、認識の違いによる後悔を少なくできます。事前に話し合いを行うべき点の一例については以下の通りです。

1.食事について

調理を担当するのは主に誰になるのか、当番制とするのかなど、だれが主にキッチンに立つのかを事前に確認することは、二世帯住宅を建てるうえで非常に重要です。
さらに世帯間で食事の時間が違うのであればメインとなるキッチンの他にミニキッチンを設けると良いでしょう。
一方、全員が揃って食事をとることが多いのであればダイニングのスペースを広くとる事も検討できます。
このように何気なくやり過ごされそうな部分こそ、ちゃんと話し合うことが快適な住まいづくりをするポイントとなります。

2.子育てについて

二世帯住宅を建てれば親世帯が子育てに参加しやすくなります。その場合でも親世帯と子世帯でじっくりと話し合う事が大切です。子世帯には子世帯の育児に対する考え方があり、親世帯も同様です。しつけに対する考え方や祖父母が育児にかかわる範囲などの確認は必ず行いましょう。

3.家事の分担について

洗濯のやり方や洗濯物の干し方でも親と子では異なる場合があります。また、共有部分の掃除についてもやり方や分担を事前に確認しておかなくては、後々のトラブルの原因となります。介護の分担についても同様です。二世帯住宅を建てる事は異なる世帯が共に暮らす事ですので、良い建物を建てるだけでなく、心地よい暮らしを継続させるという意味においてもじっくりと話し合いを行いましょう。

4.家計の分担について

お金のことは事前に話し合っておかなくてはならない最も重要な点の一つです。食費や光熱費、公共料金の支払いや税金、自家用車に係る諸経費など、どのように分担するのか必ず確認しましょう。

5.生活のルール

キッチンの使用方法、お風呂の時間や順番、ポストや宅急便の受け取りをどうするか、入室時の声掛けやノック等のマナー、空調や室温の設定温度に至るまで、気づきにくい部分も時間をかけて何度でも話し合いを行いましょう。事前のコミュニケーションこそが二世帯住宅を居心地の良いものにする最大のカギとなります。

二世帯住宅の種類

二世帯住宅の間取りは共有部分に応じて完全分離型、部分共有型、完全融合型の大きく3つに分けられます。これはプライバシーに配慮してどこを共有部分とするか、また敷地の大きさ、建物の金額など様々な要因によるものです。各間取りパターンの特徴は以下の通りになります。

【完全分離型】

完全分離型は各世帯が独立して生活できる間取りです。玄関、キッチン、お風呂などが各世帯ごとにあり、上下で世帯が分かれる場合を上下分離型、左右で世帯が分かれる場合を左右分離型と呼びます。 完全分離型の一番の特徴はプライバシーへ最も配慮された二世帯住宅という点です。独立性を保ちながらもいつでも会える距離感を実現できます。なお完全分離型の場合、光熱費や公共料金も世帯ごとに分かれる事が多くなります。
完全分離型の中でも上下分離型のメリットは敷地面積を抑えて建てられることです。一方、注意点は生活音対策です。親世帯の寝室の真上に水回りや子供部屋を配置しないようにするなど、設計に工夫が必要となります。一方、左右分離型のメリットは生活音に対する配慮が少なくて済む点です。そしてデメリットは必要な敷地面積が広くなる点です。

【部分共有型】

部分共有型は玄関、キッチン、リビング、お風呂などの一部を共有した二世帯住宅です。世帯ごとのライフスタイルとプライバシーの確保を検討した上で、玄関の他、LDKや水回りの設備等のどこを共有するかを決めることで施主様に適した二世帯住宅を実現できます。
例えば、家族での食事や団らんを重視する場合はリビングやダイニングを共有すると良いでしょう。一方、お風呂のタイミングが世帯間で異なる場合は浴室を世帯ごとに設けるか、別にシャワールームを設置するなどの工夫が必要となります。生活サイクルに大きな隔たりがある場合にはサブキッチンを設けたり、玄関のみを共有することも考えられます。
このように部分共有型は世帯ごとのライフスタイルによって多様な設計が考えられます。二世帯住宅で実現したい暮らし方を世帯間でじっくり話し合う事が部分共有型の二世帯住宅を成功させる為には必要となります。

【完全融合型】

完全融合型は個人の部屋を除き、すべての設備を共有した間取りとなります。完全融合型の一番のメリットは家族間の距離が近い事です。そして、建設予算も他と比べて低く抑えられる点も大きなメリットと言えます。一方デメリットはプライバシーの確保が難しくなる点です。
完全融合型の二世帯住宅は住み始めてから後悔しない為に、食事や掃除など共に暮らす上でのルールづくりが重要です。その為、暮らしにかかわるすべての家族の納得を得られるよう、事前に希望を募り、調整を行う必要があります。

これら間取りの他に、家族の将来を考えて変動可能な間取りの採用や段差のないバリアフリーな空間の実現、車いすが通れる幅の廊下を設けたり、手すりの設置も必要かもしれません。このように二世帯住宅を建てる際には実際に暮らす事を想定し、間取りや設備に工夫を凝らす必要があります。長きにわたって住まい続け、失敗しない二世帯住宅を建てるためには世帯間、家族内でのコミュニケーションが最も重要となります。