「パッシブタウン」視察で見えた、岩手の家でも重視すべき窓まわり

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岩手で「高断熱の家」を建てるとき、いちばんお金をかけるべき場所はどこか。

壁の断熱材? 屋根?
それももちろん大事です。でも、家のなかでいちばん熱が出入りしているのは、壁でも屋根でもあない、です。

先日、富山県黒部市にある省エネ街区「パッシブタウン(PASSIVETOWN)」を視察してきました。岩手の工務店がなぜ富山まで、と思われるかもしれません。理由は簡単で、ここにパッシブデザインとして、

 窓まわりをどう設計すれば、岩手の冬と夏を小さな冷暖房エネルギーで乗り切れるか

のヒントがあるのではないか、と考えたからです。

今回はその視察についてのご報告を。
なかでも私がいちばん惹かれた

 窓の外側で日差しを止める設計

の話を中心にお届けします。

 そもそも「パッシブタウン」とは

パッシブタウンは、YKK不動産が富山県黒部市で進めている、自然エネルギーを最大限に活かした街づくりプロジェクトです。風や地下水、太陽の光といった黒部の自然をそのまま住まいに取り込む「パッシブデザイン」を掲げ、全5街区で構成されています。

パッシブというとドイツのパッシブハウスと考えがちですが、間違いのないようにお伝えしておくと、ここは「ドイツPHI認定のパッシブハウスが並ぶ街」ではありません。あくまで、YKK主導の、パッシブデザインを追求した賃貸街区です。ドイツの「パッシブハウス」と名前は似ていますが、別物。

写真の木造の高層棟は、2025年3月に完成したばかりの最新の第5街区。設計はオーストリアの建築家ヘルマン・カウフマン氏。木造中高層集合住宅としては北陸初で、外皮平均熱貫流率(家全体の熱の逃げにくさを示す数値)UA値0.23、YKK APのトリプルガラス木製窓「APW 651」を採用しています。

数字だけ見ても、私たちが岩手で建てる高性能住宅と同じ土俵の性能です。

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私が現地でいちばん見たかった窓の「外」で日差しを止める設計

ここから本題に入ります。

高断熱の家を建てた人が、夏に意外と後悔するポイントがあります。

 冬は暖かいけど、夏は2階が暑い

というものです。断熱性能を上げて熱を閉じ込めるほど、いったん入った熱も逃げにくくなる。だから、そもそも熱を室内に入れない工夫が要ります。

その答えが、屋根面の熱射対策と窓の「外側」で日差しを遮る設計です。

 ① 窓の取付位置と計算された深い庇(ひさし)

全体として気づいたこと。

5街区に限らず、

 半外付けサッシのはずなのに、なぜかサッシを内付けにしていること。

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木造棟をぐるりと囲む軒下の回廊。木の丸柱が並び、天井は木仕上げ。ここを歩いていて気づいたのは、庇の出がかなり深いことです。

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庇の役割は、夏と冬で太陽の高さが変わることを利用しています。

:太陽が高い → 深い庇が直射日光を上で遮り、窓に当たる日差しを減らす
:太陽が低い → 庇の下をくぐって、陽だまりが室内の奥まで届く

同じ窓でも、庇の出が30cm違うだけで、夏の室温は体感で変わります。岩手は雪国なので軒の出を深く取りやすい。この設計、そのまま岩手で活きます。

 ② 木製のスライドスクリーン(外付けの可動ルーバー)

そしてこれが、いちばん見たかったもの。15年ほど前のドイツ視察でも見てこのブログで紹介したことがあります。木造棟の壁面に並ぶ、縦格子の木製スクリーンです。4階の窓だけが木製スクリーンをスライドさせて窓が見えています。赤いラインもアクセントになっていて、見た目も美しい。

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これは固定ではなく、スライドして開閉できる外付けのスクリーンです。日本の「すだれ」を現代建築でアップデートした発想ではないかと。

ポイントは、日差しをガラスの外側で止めていること。室内側にカーテンやブラインドを付けても、熱はいったんガラスを通って室内に入ってしまいます。外で止めれば、入ってくる熱は極端にすくないものになります。

「室外で遮ると、室内に入る熱を大幅にカットできる」とよく言われます。正確なカット率は製品やガラス構成で変わるので、ここでは数字を断定しません。ただ、外付けが室内付けより効くのは、物理的にその通りなのです。

私たちも、ドレーキップ窓に合わせた自社製の外付けスクリーンを開発・検証してきました。だからこそ、ここの設計には

 ドイツで見たものがすでにここにある

と素直に唸りました。考え方は同じ方向を向いている、と。

街全体が「日差しと風」で設計されている

窓まわり以外にも、なるほどと思う工夫がありました。

建物のあいだには芝生の広場と樹木がたっぷり配され、夏は木陰が街区の温度を下げる役割を担っています。コンクリートで固めた一般的な団地とでは、足を踏み入れた瞬間の体感温度が違いました。

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それから、街区の一角のガラス張りの部屋に並んでいた銀色のタンク群。これは水素を貯めておく「水素吸蔵合金タンク」で、夏に太陽光でつくった余剰電力を水素に変えて貯め、冬に使う仕組み(Power to Gas)の一部です。第5街区はこれを集合住宅で実装した、日本初の事例とのことです。

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エネルギーを、季節を越えて持ち越す(シーズンシフト)という発想。

– 秋に水素を貯蔵 → 冬に利用
– 春に水素を貯蔵 → 夏に利用

この発想は当社住宅展示場に採用しているジオサーマルシステムと同じ様な考え方です。

– 夏に地中に熱をため込み → 冬に暖房として利用
– 冬に地中に冷えをため込み → 夏に冷房として利用

地中という自然環境を利用してのシーズンシフトですね。

第5街区の水素貯蔵は、住宅単体ではすぐ真似できませんが、考え方として刺激を受けました。

岩手の冬にこそ、この「窓まわりの設計」が効く

では、黒部での学びを岩手でどう活かすか。

岩手県(盛岡・滝沢・花巻あたりの内陸)は、国の省エネ基準で2〜3地域に区分される、日本有数の寒冷地です。冬の朝に氷点下10℃を下回ることだってあります。

こういう気候の岩手では、壁の断熱を厚くするのは大前提。そのうえで差がつくのが、今回見てきた窓まわりの設計です。

私たちが岩手の家づくりで大事にしているのは、ざっくりこの4つです。

– 窓そのものの性能:トリプルガラス+樹脂・木製フレームで、窓からの熱の出入りを抑える
– 窓周囲の施工性能 :  サッシを内付け施工+窓周囲熱橋対策施工でさらに性能を高める
– 冬の日射取得:南面の窓から冬の低い陽を取り込み、室内に熱をためる
– 夏の日射遮蔽:庇や外付けスクリーンで、夏の高い日差しを窓の外で止める

この4つが噛み合うと、「小さな熱でも家じゅう暖かい」「真夏の暑さでのぼせない」という暮らしが、岩手でも現実になるはずです。

黒部で証明されている設計の考え方と、岩手の気候を知り尽くした私たちの施工。掛け合わせれば、岩手の冬はよいとして、夏の暑さにもしっかり通用する住まいになる。
そう確信した視察でした。

次回、第二弾では、もう一歩踏み込んで、

 岩手の冬を少ない暖房で乗り切るための、具体的な断熱材とサッシのスペック

を、今回の気づきと絡めて掘り下げます。

ただ、窓まわりの設計は、スペックシートを眺めるより、実物の窓際に立って直に触れてもらうのがいちばん早い。冬の朝、暖房を切った部屋で窓際がどれだけ冷えないか。庇の下に陽が届く感じ。これは数字では伝わりませんので。

見学会では、ぜひ窓際に立ち、窓周囲に触れてみてくださいね。

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