一日上棟は一日にして成らず!?ーⅡ

つまらん昨日の内輪話の続きです。
いつもながら、読み取りにくい表現がありますことを前もってお詫びします。
標準語しか知らない方には苦痛をお与えすると思いますので、続きを
読まれることは余りお薦めしません。


 会議にて社員である大工たち(5人)と現場監督Tがパネル化を進める
ことに決まった。パネル化への手順を考え、予定を組むように指示した。
ところが工場に行ってみると、既に1ヶ月経つのに使われた気配がない。

「カットソーで試し切りした気配さえもない!!んじゃねえの?」

事務所に戻りTにそのことを問うと困ったという表情を見せながら
「現場が忙しくて、時間がない。そう簡単には・・・」という返事。

・・・確かに。その時はお陰様で現場は忙しかった。ここで私は強くも
言えない。というのも一つの後ろめたさがあった。

この住宅のパネル化については、設備の購入決定も工場設置の決定も
事前に相談もせず、事後報告のみ。当事者からすれば、
「親方あ勝手に決めておいて、さあやれやあ!って言われても・・・」
という気分なのだろうことは鈍い私でも察しはついていた。

「急にとは言わないが、合間を見つけて徐々にでいいから進めてくれ」

無理強いしたくはない。彼らに時間を与えよう。

そんなやり取りのあった3ヵ月後。まったく進捗なし!
担当スタッフ全員を招集。その時、社員大工の頭であるEから、

「パネル化すても、人工(にんく)はかかるっすよ。運搬どが大変だあ」

(※人工(にんく)とは、一件上棟させるのにかかる作業人数のこと)

「やってもいねえうづがら、出来る出来ないの判断はおかしくねえが!?
 まあず、最初は一人でもいいがらよ、ランバー(木材)のカット位は
 やってみでけろや!そしてその次にパネルの試作に移るどがよ」

少し強い口調でお願い?をした。私の性格の根っこは短期だ。
ところが、二十八で金もないのに独立してから、徐々に堪え症が身に
付いていた?のだろう。この時も「自分が性急過ぎるのだから」と自分に
言い聞かせ、焦る気持ちを飲み込んだままで終わることができた。

そして、その3ヶ月後(設置して半年後)のある日

私は切れた

気の長~い、仏のヒデちゃんもこれまで。

全員召集。

何人かがいろんなやらない方がいいと理由を言う。
経験を元にごもっともらしく聞こえるが、
私にはもう単なる言い訳にしか聞こえない。

先ず、次の現場から壁をパネル化すること。床、屋根は工場でプレカット
すること。人工(にんく)が余計にかかろうが、そのことによって工期が
逆に延びるのもいい。俺がお客さんに頭を下げればいいだけ。そのことで
お前たちに責任はない。責任は一切俺がとる。だから、このことに関しては
一切有無を言わせない。

というようなことを真っ赤な顔で、頭上に湯気を発しながら
激ったように思う。

そしてやっとパネル化がスタートし、ペースを掴んだあたりの3ヵ月後。
工場に行った時に頭のEに声をかけてみた。
「どうだ、調子は。大変だが?」

「いやあ、大したカラダが楽だぁす、早えすよ!こんなに楽だったら、
早ぐやってれば良がったす」と照れながら笑った

はああ!?
おいおい、おめえ、前に言ってだごどど違うんでねえのがよ・・・

まったくゲンキンなヤツ!と思いながらも機械類を設置して9ヶ月、親方は
やっと胸を撫で下ろすことができたのでした。

この時、学んだこと。
技術屋系、特に職人のような人は、自分の経験から外れることを嫌う。
経験を守ることの方に気持ちが向かうこと。だから伝統が守られてきた、
とも言えるのだが・・・。

それを乗り越えるには体験しかない!

この経験を踏まえて一日上棟に向けてパネル化は更に進化することになる。

そしてある時、私は突然に彼らに言う。
「フレーミングを一日でやってしまうところがある。俺たちもやるべ!」

「まあだ社長お、俺らだずさ騙すて稼がせる気ぃすてえ!そったなごどでぎる
 わげねえべえ!ほんとにでぎるどごがあんだら俺だづにでぎね訳ねえ!」

こんな反論にもこの時の私はすでに余裕。
「よおす、その言葉忘れんなよ。北海道でやってるどごさあっがら、行って
 見で来お!」と北海道視察を決行。

実際、北海道で現場に一日張り付き一日上棟を目の当たりにして帰って来た
彼らにもう何も言う必要はない。目の色が違っていた。

「あの人だづに出来んのに、俺らだづさ出来ねえわげねえべ!」

やる!やれる!と思った瞬間にすでに出来たようなもの。

バラック工場を設けて1年と7ヶ月。

一日上棟を初めて達成!

その後もパネル化の仕組みは行きつ戻りつ進化し続ける。
全て住む人のための進化。
長くなりましたのでここでははしょります。

いろんな思いがあります。
でも、ここまで要した時間はともかく、できたことに感謝です。
家が雨に何度も晒されずにすみ、そのことによって一人でも多く喜んで
もらえる。そしてその喜びで私たちのやりがいが満たされるのですから。

                   “精鋭部隊”誕生記より

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