見えていなかった価値

14年前のスウェーデン訪問時、


立ち寄った完成間際の工事現場。

へえ~、せげえすげえ。

こりゃ、すげえべ、さすがだなあ。

見るもの触れるもの、すべてが新鮮。

ところが外側から眺めた窓周り、躯体とサッシの間に目が止まった。
なんだべ・・このスポンジみたいなのは?
15mmくらいはある?
黒いスポンジ状のものが構造躯体とサッシのクリアランスを埋めていて、
それが少し絞り出されたようになっていて決してきれいには見えない。
それを仕上げで覆うわけでもなくむき出しのままって。。。
日本じゃあり得ないべ。

スウェーデンの施工って結構荒っぽいものだと思う、何も知らない私。
知らないって悲しいもので、
未知のものに出会った無知な私にはその価値に気付けないのだ。

その数年後、サッシの輸入先であるドイツのサッシ工場に訪れた際、
サッシ交換の現場で見せてもらい、
スウェーデンで見たものと同じものを見ることになる。

こんなにも、ヨーロッパの現場では一般化しているものなんだあ。

となれば、せっかくの機会なので詳しく知りたくなった。
そこで工場にて、実物のモノを使いながら、
どういう性質で、どのような目的のために使うのか、
をレクチャーを受けた。

その時に、これが今一番いいものだと薦められた。

日本では窓周りをどのように施工しているのか?と聞かれ、
発泡ウレタンを注入していると応えると、

それでも大丈夫だ、自分たちも以前はそうしていたから。

ドイツではどのような判断で、なぜこのスポンジ状のテープなのか?
と質問を向けると、返って来た答えが、

発泡ウレタンはベターだが、このテープは今のベストだ。

というものだった。
ほかに、スウェーデンでも窓周りにむき出しのものを見たことがあるが、
そういう施工をするってどうなんだろうか?
と質問すると、

全然露出してても大丈夫さ、
紫外線等に暴露し続けてもほとんど性能劣化しないからね。

そんなスグレモノだったのだ。

日本の場合、サッシ周りの気密性は発砲ウレタンを注入し、
外壁材とサッシの取り合いの防水はシリコンのコーキングで処理するのが一般的だが、
このテープは気密と防水の二役を兼ねているのだ。

そんな良いものなら使いたい!と誰でも思う。

しかし、値段を聞いてびっくり。
会社に戻ってから社内で検討するも、それは余りに高いべってことで、
当時は見合わせることにした。

しかしずっと気になっていた。
スウェーデンでもドイツでもウレタンよりずっとあの高価なテープを
なぜ窓周りに使うのか?
私は価格差を埋めるだけの価値を見い出せてはいないが、
ヨーロッパの人たちは価格差を埋める価値を見出している。

私が気付けていない価格差を埋める価値がきっと何かある。
一体それは何なんだ?って、ずっと頭に残ったままだった。

そして5年前のドイツで、

ヨーロッパの人たちにとって、
窓の交換時期が来るのは当たり前のことで、
窓交換して外したサッシはリサイクルする。

ドイツでは40年くらいでサッシを交換するでしょ。
とさらっと返してくる。

という会話から、私のパラダイムシフトが起こり始めた。
家の寿命は100年200年当たり前だろと考えている彼らにとって、
窓の交換は不思議なことではないのだ。

窓の交換を前提にしたら、防水と気密が確保されるなら、
それはむき出しのままの方が仕上げの処理が不要となり、
窓交換はまったく容易になる。

その後調べて行くことで、
防水のしくみなどを知り私たちの中での価格と価値のギャップは埋まり、
一部住宅にではあるけど採用することになった。

今回の当社住宅展示場で進んでいる断熱改修工事。
築40年を経たわけではないが、そこはやはりモデルハウスなので、
現在ある最新のスペックにしないと、ということで始まった。

昨日は断熱アップのメインとも言える窓の交換作業。


古いペアガラス窓を取り外した後に、新たにドイツのサッシフレームを据える。
その前にサッシフレームの周囲にテープを貼り込む作業をしてから、
そのまま外周開口部にはめ込んで固定する。

この時点で躯体とサッシとの隙間は5mm程あり高気密とは言えない状況であるが、
構わずそのまま放置していいのだ。
それは何故かと言うと、じきに隙間は埋まるから。

作業で出た切れ端を貰って事務所に放置してみる。


この時点の厚みは5mmちょっとかと。


そして時間の経過と共に、ここまで膨張してしまう。

ウレタンのように固化するのではなく、
この膨張しようとする圧力はずっと保たれるしくみがこの素材にはある。
このスポンジには室内側と屋外側で圧密度が違っていて、
その密度差によって水は滲みるが水の侵入は完全に防ぐ上に、
内部からの湿気は通すという仕掛けなのだそうな。

まるで、ゴアテックスのようだ。
雨合羽だってゴアテックスだと10倍位の値段はする。
それでも一度使用した人は二度と普通の雨合羽は着れないという。

雨合羽と家とは違う。
雨合羽は身体が価値を感じるのに対して、
このしくみは長い年月の中で家が感じる価値なのかもしれない。

家を考えるのに、普通の日本人は40年後の窓交換まで考えたりはしない。
けれど、40年後までの確かな防水性とその時の窓交換費用、
そのことに加えて、
次世代に受け継ぐ地球環境を考えることができたら、
価値はあると思える。

今日、工場のスタッフがこのテープの新たな利用方法を
サンプルを携えて持ってきてくれた。

これ、いいねえ!

サンプルを見た瞬間、ずっと懸案だったものがこれで解決できると確信し、
採用を即決。
ほんの小さなことだけど、家づくりってそんな積み重ねだから。

世の中にはすごい素材を生み出す人がいて、その素材の価値を見出す人がいる。
私なんかは見出すのに何年掛かったんだか。。
その素材を見出すも活かすも、素材を観て扱う私たち次第ていうこと。
私なんかはもっともっと創造力を磨かないとね。

それにしても、

俺って、

凄腕の料理人たちに恵まれた幸せ者なのかもしれないなあ。

感謝!

2 件のコメント

  • こんにちは。
    スウェーデンでは14年前に既に使われているものなんですね。今は更にいい物を使っているかもしれませんね。30年前にカナダに住んでいましたが、今の日本の住宅より快適な住まいでした(汗) 
    全く冷気頑張れありませんでした。窓も当時既に分厚いものでした。壁の厚さも違うんだろうと思いますが。

    20年前に自宅を新築しました。もちろんカナダのレベルではありません。
    今現在45年前に建てられた鉄骨の家を暖かく住みやすくリノベしなければなりません。
    他の業者さんが本気でかんがえていない、窓の付け方に興味を持たれたと言う事に共感しました。
    残念ながらこちらの地域のリノベはやっていないとの事。
    自力で何とかしなければなりません。
    これからも断熱情報発信よろしくお願いします。

  • コメントありがとうございます、気付くのが遅くなり申し訳ありませんでした。
    30年位前のカナダですかあ、バンクーバー近辺しか知らないのですが、当時の記憶としては2×6で高性能のグラスウール140mmとかEPSを挟み込んだパネルだったように思います。
    それからしばらくして外張り断熱を付加するようになったと記憶しています。
    45年前の鉄骨の家ですと断熱は無いに等しいのではないかと思われますが、
    それを暖かくしたいとなると、外張り断熱を主に考えられいいかもしれませんね。
    私どもも力足らずでまだまだできないことばかりですが、お役に立てるような情報を発信できたらと思います。

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