室温上昇とVOC(揮発性有機化合物)放散量と換気

せっかくなので、昨日に引き続き建材等に含まれるVOCネタで、今日は温度と放散量の関係を。


昔、施主さんが購入した家具等をお預かりし、VOC類を低減することができたらいいよね。
てことで、処置小屋を作ったことがあります。これを当時は「窯」と呼んでいたかな。

これを必要ではないかと考えたのは、当時アレルギーのお子さんのために家具や家電を購入する際は、しばらく展示されているものを購入するか、箱から開けてしばらく(数か月?)家の外に放置しておいてから使うようにしているという一人のお母さんの話からでした。きっかけはカラーボックスみたいな家具にお子さんが反応したことから、それ以降気を付けるようになったのだとか。。

そこまで大変な思いをされている方がいるなら、ぼくらにできることはあるんじゃないか、と考えて作ったのが処置窯でした。
処置窯って言っても、ベイクアウトの手法を家具に適用するだけのことです。

ベイクアウトとは、
加温することによって建材等に含まれる揮発性有機化合物を強制的に放散させることで放散量を低減させるための手法です。

この時実施したテストが、温度と放散量の関わりがわかりやすいかと思ったので紹介します。

測定場所 処理装置 処理装置 処理装置 処理装置 処理装置 処理装置 処理装置 処理装置 処理装置
月  日 5月8日 5月8日 5月11日 5月13日 5月17日 5月18日 5月20日 5月22日 5月28日
気  温 24.4 ℃ 24.7 ℃ 37.4 ℃ 38.0 ℃ 41.1 ℃ 38.2 ℃ 37.5 ℃ 41.8 ℃ 21.9℃
41.0 ℃ 36.2 ℃ 40.6 ℃ 41.4 ℃ 43.9 ℃ 43.0 ℃ 45.2 ℃ 42.4 ℃ 22.8℃
湿  度 17.00% 33.00% 29.00% 19.00% 19.00% 29.00% 23.00% 20.00% 60.00%
9.00% 23.00% 27.00% 20.00% 19.00% 24.00% 20.00% 23.00% 49.00%
測定開始時間 12時20分 18時28分 10時04分 10時10分 10時22分 15時07分 14時20分 13時45分 18時01分

試験期間は20日間、赤数値が室温でその下が床面温度です。
加熱方式を床暖方式にしたのは、その方が温度差とか乾燥による家具の傷みが少ないのではと考えたからです。

この際投入した家具は、ソファセット・ダイニングテーブルに椅子4脚、チェスト2。

シンプルに、3点だけ抽出してみます。

VOC検出物質 5月8日 5月11日 5月13日
15 ベンゼン 2.66 1.32 7.18
24 メチルシクロヘキサン 0.00 0.00 0.00
30 トルエン 0.00 15.30 0.00
37 mp-キシレン 0.00 6.68 0.00
42 α- ピネン 39.12 102.92 108.10
47 β-ピネン 0.00 37.72 37.02
52 カレン 0.00 127.82 113.58
53 リモネン 0.00 67.60 48.74
60 n-ドデカン 0.00 0.00 0.00
65 テトラデカン 0.00 0.00 0.00
67 n-hexadecane 0.00 16.58 16.46
TVOC(μg/m3) 41.78 375.94 331.08

※放散目的なので換気扇は常時稼働。

室温が13℃上昇することで、家具からのVOC放散量は10倍近くまで上昇してしまうのがわかります。
№30のトルエンと№37のキシレンの5月13日結果を見てください。
常温では「0」だったものが温度上昇で検出され、その二日後再び「0」に。

ところがトルエンは5月18日以降再び検出されるようになります。
№24、60、65も「0」ですが、のちに検出されたものです。
それは、空気を攪拌したから。

窯の目的が、より早く放散させることなので、18日から扇風機を回してみました。
温度を上げ、空気を攪拌することは的を得ていたということになります。

まあ、詳しいことはさておいて、気温が上がると家具だけでこういうことが起こるということを知ってもらえたらいいのです。

現実の生活で室温が40℃超えることはないかもしれません。夏場の日中、窓を閉め切り仕事に出かけた日なら2階などは30℃台後半もあり得るのではないでしょうか。そこに一番最初に帰宅した人が一番濃厚になった空気を吸うことになります。

コロナ対策なら在室時のみの換気量に気を遣えばいいですが、VOCはむしろ不在の時こそ配慮すべきなのかもしれません。

対処とすれば、
当然できるだけ放散しないことが望ましいわけですが、身近な生活用品からもたくさん放散することから、

 ➀外出の時も、今日のようなお天気なら冷房運転で温度上昇を抑える。

 ②外出時はできるだけ窓を開けておき、室温抑制と常にVOCが排出されるようにする。

  窓を開けるのに、外出時の雨や防犯のことが心配なら当社でも標準的に採用している
  ドレーキップ窓がおススメかと。
  国産サッシメーカーでも扱っていますので検討してみてください。


ドレーキップ窓の内倒し時の換気状態はこんな感じ。

思い浮かぶ対処はこれくらいではないでしょうか・・

それから、住宅ではないですが駐車中の乗用車も高温になるスペースです。乗車する時に濃厚な放散物質を吸い込むより、常にほんの少し窓ガラスを開けておかれた方がよいかと。

ちなみに私は、一年365日常に開けているかもしれません。
時に車内に雪が積もってたりしますが(笑

以上、

家づくりを通じてー見えないものを観たいー変な住宅屋のぼや記でした^^

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