ここが違う、アメリカの家と日本の家:ツーバイフォー工法

私のPCの空き容量不足からPC内をぼちぼちと断捨離中!その中にスタッフの出張レポートがありました。特にアメリカで観た住宅の工事現場についての内容を懐かしく読ませてもらったので、今日はその内容についていくつか紹介したいと思います。

土地傾斜をそのまま利用して建てるのが一般的なアメリカの家

日本では平坦な土地が好まれるのが一般的です。しかしアメリカでは平坦なエリアより丘陵地に建てた家の方が眺望が得られるため、土地の価値が高いと考えるようです。日本なら傾斜地にコンクリートの擁壁作って平坦にして建てるのが一般的なのに対し、アメリカでは本来の土地の傾斜をそのまま生かした自然な状態を設計に取り込むことを好むようです。

アメリカの家の傾斜地の基礎構造

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写真を見てください。基礎が段々になっているのがわかります。床土間面は敷地の高い方まで掘り下げていますが、左側基礎は段の勾配と同じように基礎外側では敷地が傾斜しているとして見て下さい。また敷地の傾斜を利用して床下空間を確保し、物置スペースや機械室などに利用しやすくしています。このように無駄のない利用を心がけているのも注目したいポイントです。

傾斜地利用するアメリカの家のビルトインガレージの床構造

日本にいてガレージ内の床は鉄筋コンクリートスラブにするのが当たり前だと思っていたのは私だけではないのではないでしょうか。ところが、日本の常識とは違い、アメリカの家はツーバイフォー構造で床を構成するという自由な発想がありました。

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工事中ですが、ここはビルトインガレージだということがわかります。この開口部にきっとオーバースライダーのガレージシャッターが取り付けられるのでしょう。と想像しながら作業者さんたちの休憩の邪魔にならないように遠目に見ていると、ふと床面の穴が気になりました。どう見てもコンクリートの床ではありません。これはもしかして木造での床構造では?てことで彼らの方に近づいてみました。

すると、

多用途に柔軟に考えるアメリカの家のガレージ

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防腐処理された2×12材の床根太で作られていることがわかります。日本の常識に凝り固まっていた私にこれは結構な衝撃です。確かに、考えてみると以下のようになります。

 1.雨の心配はない:ビルトインガレージなのだからガレージ内は雨が当たらないスペース。雨に濡れたタイヤが入り込むことはあってもその程度なら濡れても良い素材で仕上げれば良い。

 2.利用可能スペース:床下空間ができるので何かと利用しやすい。

 3.施工しやすい:土盛りして擁壁(基礎)を施工するより工事費を抑えることができる。

こう考えると、床構造でも強度面の問題さえ解決されれば、他には何の問題もなく可能だということになります。

アメリカのツーバイフォー工法の特徴

北米発祥のツーバイフォー工法ですが、日本にツーバイフォー工法が導入されてから、日本人が考えやすい・作りやすい方式に変えられた経緯があるようです。現状で私が知る範囲で日本のツーバイフォー工法との違いをお話します。

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OSB合板の多様

アメリカのツーバイフォー工法では、OSB(Oriented Strand Board)合板(木材チップを固めたもの)を外壁や屋根、そして床材の構造用面材として30年前から当たり前のように使われていました。耐水性と耐久性があり、価格が安いということからのようです。ここ20年ほど前から日本でもOSBは使われるようになっています。しかし、当社ではOSBを検討したことはありますが、フレーミングした時の見た目は針葉樹合板の方が圧倒的にきれいなので昔から変わらずに針葉樹合板で通しています。

トラス構造の採用

 屋根や床にトラス構造(木材を三角形に組み合わせた強度の骨組み)が使われることは30年前からアメリカの住宅の工事現場で目にしていました。これは軽量でありながら高い強度を持ち、大きなスパン(空間)をカバーできるというメリットがあるものでした。これを見た時もさすが本場だなと思い、採用できないか検討したことがあります。アメリカのトラス工場をいくつ視察したことか。でも、トラス工場にかかる設備費用など、外販するわけでもないのに身の丈に合わないと判断し断念することになりました。ただ、屋根トラスだけは作業性の確認だけはして置きたくて一度だけ採用したことはありますね。

当社が採用しているもしくは採用できるアメリカの一般的な構造

  1. 外周壁は2×6がスタンダード:アメリカの住宅の外周壁は2×6を使います。充填断熱がメインだった当時は当社も2×6を外周壁に採用していました。10年ほど前から外張り断熱を断熱のメインとするようになってからは2×4が一般的となっています。但し、現在でも1・2階を一体の通し壁にする時は2×6となります。
  2. 4×8合板がスタンダード:日本では尺貫法から3×6、3×8、3×9板と言われるサイズで構成されますが、アメリカでも当社でも4×8サイズが一般的です。
  3. 外周部の外面合わせ:日本では外周壁も間仕切り壁もモジュール(合板寸法)を基本に壁の芯で設計されます。ところがアメリカは外周部については、日本の考え方とは違い、モジュール芯を半壁分内側に設定するのです。これが構造用合板を外周壁外側に合わせる外面合わせと言います。

この2と3は実に合理的で無駄なく構造強度を高めることを知ることになりました。そうなると、日本式に拘る必要はなく、住む人に良いことならと方向転換することになります。これが北米型ツーバイフォーに切り替えた最も大きな理由だったのです。

構造用合板スリットと合板クリップ

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写真右側吹き抜けの屋根面を見てください。合板と合板のつなぎ目に隙があるのがわかります。ずっと以前からこの隙間のことを知っていたのですが、見た時に現場の方に訊いたことがあります。

 これは何のためか。

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と。すると返ってきた答えが、

通常、合板のつなぎ部には2×4材を入れて合板同士を受けて固定します。ですが、金物クリップを使えばその2×4材は不要になること。そしてこのスリットが建物内な外周壁内の湿気排出効果を高める。

とのことだったのです。そういうことならばってことで当然使ってみましたよ。ところが、一日フレーミング時のクリップ取り付け作業が意外と手間がかかること。そして一番の理由は合板受けの2×4材がないと一日フレーミングの際、足をかける場所がないので作業し辛いし安全にリスクがあるということで即断念することにしたのです。試してダメとなりゃすぐ撤退ですから(笑

現場にスプレーで原寸の配管指示

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例え図面化されてたとしても、アメリカでは写真のように、現場にしっかりとスプレーで原寸指示されているのです。作業者は細かい図面を見ながら作業をする必要はなく、直感的に作業することができるので施工人件費を抑えることができます。実に合理的!だと思いましたが、この落書きのような方式を日本の人が受け入れられるかを考えると・・結果採用しないことに。

アメリカの家のコンセントは横配線

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日本の住宅では、コンセントの配線が縦方向に配線されることが一般的です。ですがアメリカの住宅ではコンセントの配線は横に流すのが一般的なのです。写真のようにスタッド(柱)に配線用の穴が開けられています。このスタッドは2×6材なので中央に穴あけされています。スタッドがもし2×4材なら表裏どちらかの面を決められた範囲内で欠きこみ金物で補強することもできます。

この施工法をアメリカで初めて見た時、

 これは暮らしてからコンセントを増設したくなった時に便利だ!

と私たちが建てる家でも採用したいと思いますよね。
ところがです。いざやってみようと、電気工事業者さんに相談すると、応じてくれる所がないという壁が・・・
ということで棚上げになったまま今に至っています(悲

アメリカの屋根トラスは日本の数寄屋風屋根を可能にする?

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当社もそうですが、日本の2×4工法の現場では垂木方式と言われる屋根構造が一般的です。当社の場合2×8材を使用していますのでどうしても軒先の屋根面に厚みが出てしまいます。薄くもできるのですが逆に手間コストが高くなってしまうので採用されることはありません。

アメリカでは屋根トラス
が広く使用されています。屋根トラスは、工場であらかじめ製造された三角形の構造材で、屋根の骨組みとして一体化されたものを現場で組み立てる方式ですが、主に2×4材で構成されるので、写真のように軒先を細く見せることができます。これって、このままで見ると日本の数寄屋の屋根のように見えませんか。これができたら数寄屋風もツーバイフォーでできるに・・と思ったものです(笑

結果、トラス方式は建築現場の敷地が広いアメリカならではのシステムであり、狭い日本の敷地では扱えないというのが私たちの判断でした。

ツーバイフォー工法、日本とアメリカとの違いまとめ

ここまでを大まかにまとめると以下のようになるのではなります。

 ・敷地を平坦に造成するのが一般的な日本の家、敷地形状傾斜などを利用するアメリカの家
 ・ビルトインガレージ床は土間コンクリートにする日本、ツーバイ材で空間利用も考えるアメリカの家
 ・床トラス、屋根トラスの採用が一般的なアメリカの家
 ・日本とアメリカで採用される構造用合板サイズの違いと外周部設計寸法(外面合わせ)の違い
 ・日本とアメリカでは配線・配管方式が違う

アメリカの合理的な考え方や便利な施工法で「これは良いよね」と思えるものを採用できたら・・・
日本で言う当たり前な施工も少しは良い方向に進歩するではないかと思います。

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