省エネ住宅に蓄熱性能を持たせることや潜熱蓄熱材の可能性

潜熱蓄熱材PCMの効果を検証の画像

2015年断捨離から。
それまでよくわかっていなかった冷暖房方式の省エネ性や暖房方式の組み合わせ等の効果検証をメインに、せっかくなら合わせて蓄熱性能や潜熱蓄熱材の効果検証もやっておこうと進められたのがPX-Ⅱプロジェクトでした。

岩手の高断熱住宅に冷暖房方式での省エネ性を検証

岩手県滝沢市2015年新高断熱住宅PX-Ⅱ暖房設定メモの画像

この時行った冷暖房方式は、

 ①簡易型温水床暖房(築後床暖施工スタイル)
 ②2階エアコン
 ③冷暖房パネル
 ④冷暖ファンコイルユニット
 ⑤床下エアコン

この他に、
 ⑥ツーバーフォー構造のヒートブリッジ対策構造スペック
 ⑦潜熱蓄熱材(PCM)の空調利用への検証

この7項目を目的として、

岩手県滝沢市2015年PX-Ⅱプロジェクト暖房消費量の画像

住宅内外の温湿度推移と消費電力量を記録しすり合わせていく作業です。

今日は⑦の潜蓄熱材ネタから、住宅の省エネについて簡単に紹介しますね。

蓄熱性能は省エネ性能

暖房方式での省エネ性は一番最初に思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか。最近になってやっと住宅の断熱性能は省エネ性に貢献することが認知されるようになってきました。けれど、蓄熱性能が省エネに寄与するという認識は一般には認知されていないのではないかと思います。

蓄熱性能のメリット

蓄熱性能は省エネ住宅において重要な役割を果たします。

主なメリットは、

エネルギー消費の削減
 ・日中の日射によって蓄えられた熱を、夜間に放熱することで暖房エネルギーを減らすことができる。
 ・夏場は夜間の冷気から冷えを蓄え、日中の冷房エネルギーを減らすことができる。

室内温度の安定化
 ・急激な温度変化を抑え室温を平準化し、快適な室内環境を維持することができる。

と言ったところでしょうか。
省エネ先進国でもあるドイツでは断熱とセットと考えるのが当たり前ですかれ。

高断熱住宅での潜熱蓄熱材の可能性

潜熱と聴きなれない言葉ですが、液体が固体になる、または固体が液体になる時のそこで顕在化するエネルギー量のことです。例えば、水が液体から固体になる時、液体1℃下がる時のエネルギー量の約80倍のエネルギーを放出します。このエネルギーを潜熱と言い、このエネルギーを利用した蓄熱材を潜熱蓄熱材と言います。

潜熱蓄熱材(PCM)

潜熱蓄熱材PCMの効果を検証の画像

PX-Ⅱプロジェクトで使用した潜熱蓄熱材PCMが写真のものになります。このケース二つ分を検証で使用しました。

私が蓄熱性能に触れたのは25年ほど前です。その時もパッシブスタイルの冬の日差しが床面に当たる、その熱を床面下の潜蓄熱材(PCM)に蓄えるダイレクトゲイン方式でした。

蓄熱性の重要性を知ってからは、実験棟でコンクリートブロック量の加減でどのくらい室温を平準化できるか確認したものです。元々は冬の過乾燥対策のために住宅内部の仕上げとして採用することになった塗り壁材や漆喰仕上げですが、その仕上げ自体に蓄熱性もあることから、コンクリートブロックの蓄熱性から室内漆喰の使用量を想定したりもしたものです。

なので、漆喰仕上げ=省エネ

ということも知って欲しいですね。

その後、アメリカの建材展で植物由来の潜熱蓄熱材に出会います。わけのわからない化学的なものよりずっと健康的だということでその展示会の場で検証用に注文し、飛行機便で輸入したのです。その潜熱蓄熱材資料によると、シート状になった蓄熱材形状が空調用に考えられたことが分かりました。ですが実験棟ではあくまで蓄熱性能だけを検証。
この経緯があったので、この時のプロジェクトでは空調用として検証してみたかったのです。

結果としては明快な効果は確認できず(笑
反省としては送風量の調整機能も持たせてたら良かったかな?という感じかな。

私からの2015年断捨離 PX-Ⅱプロジェクト潜熱蓄熱材報告は以上でおしまい(笑

最後に、AIさんに潜熱蓄熱材の海外の事例について質問しての回答を紹介して終わります。

潜熱蓄熱材の海外での活用事例

ドイツ – フライブルクのソーラーハウス

PCMを含む石膏ボードを使用し、室温を18〜26°Cの快適範囲に維持している。
暖房エネルギーの消費量を従来の建物と比べて約15%削減

米国 – カリフォルニア州のZero Net Energy住宅

屋根裏や壁にPCMを組み込み、冷暖房負荷を大幅に削減している。
エネルギー消費量を通常の住宅の30%以下に抑えることに成功。

オーストラリア – メルボルンのSustainable Buildings Research Centre

PCMを天井パネルに統合し、冷暖房システムと連動させている。
ピーク時の冷房負荷を40%近く削減