家づくりは、お客様の目に触れない部分の積み重ねでもあります。
たとえば、外壁の中に隠れる「透湿防水シート」。完成すれば二度と見えない、地味で目立たない一枚の紙のような建材です。私たち岩手・盛岡の高性能住宅会社では、この一枚について1年かけて検証を重ねたうえで、長年使ってきたアメリカ製の定番品から、ドイツ製のものへと選び直しました。
きっかけは、性能の優劣ではありません。この20年で断熱や壁の構造そのものが大きく進化してきた——それなら、そこに挟む一枚も、いまの構造に合わせて見直してみよう、という話です。
「ちゃんとした家」のはずなのに、なぜか不安が残る
岩手で家を建てようとしている方の多くが、いま、こんな悩みを抱えていないでしょうか。
- 断熱材やサッシのスペックは比較できる。でも、壁の中に何が入っているかは分からない
- 「うちはドイツの〇〇を使っています」「アメリカの△△が標準です」と言われても、結局どっちがいいのか判断がつかない
- カタログ上の数値はどこも似たり寄ったり。何を基準に選べばいいのか分からない
特に、外壁の中に入る「透湿防水シート」は、ほとんどの方が名前すら知らない部材です。
でも、ここがちゃんとしていないと、壁の中で結露が起きたり、雨水がじわじわ染みたりします。岩手の冬と夏の温度差を、35年、40年と耐え抜かなければいけない一枚です。
「見えない部分こそ、こだわってほしい」——そう思いながらも、施主の側からは確認しようがない。これが、家づくりの一番もどかしいところかもしれません。
20年前の選択は、いまも正解だった
私たちがアメリカ製の透湿防水シート「ウェザーメイトプラス」を採用してきたのは、もう20年以上になります。
当時、選定の基準にしていたのは「防水性」と「透湿性」がしっかりしていること。雨水を確実にはじき返し、壁の中の湿気はちゃんと外に逃がしてくれる——この2つの機能が確かな一枚を、と探した結果でした。そして実際、20年以上のあいだ、岩手の現場で大きなトラブルなく仕事をしてくれた、信頼できるシートです。
すでにウェザーメイトプラスで建てたお宅にお住まいの方、安心してください。私たちが見てきた限り、当時の選択は今も正しかったと思っています。
ただこの20年のあいだに、家のほうもずいぶん進化しました。柱と柱のあいだに断熱材を入れる「充填断熱」だけだった壁が、いまは構造用合板の外側にもう一枚断熱材を張る「付加断熱(外張り断熱)」と組み合わさるのが、岩手のような寒冷地では当たり前になっています。壁の層の数も、湿気の通り道も、20年前とは少し違う景色です。
家が進化したなら、そこに挟まる一枚も、いまの構造のなかでもう一度見比べてみよう——そう考えたのが、今回の検証のきっかけでした。
比較対象として並走させた、3種類の透湿防水シート
そこで、これまで使ってきたウェザーメイトプラスに、業界で広く知られる2種類のシートを加えて、1年かけて並行検証することにしました。
- ウェザーメイトプラス — アメリカ製。当社が20年以上採用してきた信頼の一枚
- タイベック®シルバー — アメリカ・デュポン社製。日本でも採用実績が多い、遮熱機能を持つ透湿防水シート
- ウートップ®ハイムシールド — ドイツ製。Wuerth(ウルト)社の高耐久透湿防水シートで、近年話題の「界面活性剤による劣化」への耐性を売りにする一枚
検証の軸は、20年前と同じく、透湿シートに求められる本筋の性能から。
- 防水性 — 雨水を確実にはじき返してくれるか
- 透湿性 — 壁の中の湿気を、ちゃんと外に逃がしてくれるか
- 耐久性 — 30年、40年とその性能を保てるか
この3点で、いまの壁構造のなかでどう振る舞うかを見比べました。
1年検証して見えた、「シート単体では差が出る。でも壁の中では差が消える」
結果は、ちょっと面白いものでした。
シート単体で透湿性を測ると、3つには有意な差がありました。カタログ値どおり、ハイムシールドのほうが湿気を通す力が高い数値を出しました。ここまでは予想どおりです。
ところが、私たちが実際に組んでいる壁——構造用合板+外張り断熱材+防水透湿シートという複合構造——のなかで透湿性を測ると、3者の差はほとんど消えてしまったのです。
理由はシンプルで、複合構造の透湿性は「いちばん湿気を通しにくい層」に支配されるからです。シートだけ性能が高くても、構造用合板や断熱材の透湿抵抗のほうが大きければ、壁全体としてはそちらに律速される。シート単体の差は、壁全体のなかではほぼ吸収されてしまう。
これが、1年検証して出した私たちの判断でした。
透湿性については、今の壁構造のなかでは3者に決定的な差がない。
つまり、20年使ってきたウェザーメイトプラスは、透湿性という軸では今も十分に役割を果たしてくれている、ということです。
ここから先、判断の決め手として残ったのが「防水性」と「耐久性」、この二つでした。
防水性 — 雨水のはじき方の安定感
ハイムシールドは、表面の撥水性、テープ施工部の止水の食いつき、強風雨を想定した状況での挙動にもう一段の余裕がありました。岩手の家は冬の吹雪も、夏の横なぐりの雨も受けます。施工後、外壁が貼られるまでに雨にさらされる期間もある。そこでの安心感の差は、現場で見ているとはっきり感じます。
耐久性 — 経年での”へたり”の少なさと、界面活性剤への耐性
並行して張り出した試験片を1年通して観察すると、ハイムシールドは表面の劣化が穏やかに見えました。もうひとつ大きいのは、近年業界で課題になっている「界面活性剤による劣化」です。木材保護に使われる防蟻薬剤などに含まれる成分が、シートの防水機能を弱めるリスクが指摘されていて、ハイムシールドは公的試験機関でこの試験をクリアしている、という背景があります。
透湿シートは一度施工したら外壁を剥がすことがない限り張り替えがききません。20年、30年というスパンでは、正直、3者とも大きな差は出ないだろうと思っています。ただ、50年、60年と時間が経ったとき、その先にほんの少しの違いが見えてくるかもしれない——その「かもしれない」を選んでおきたかった、というくらいの話です。
防水性と耐久性で一歩前に出る——これが切り替えの本筋です。
ただし最後に、「厚みは大丈夫か」を念入りに確認した
正直にいうと、採用にあたって一つだけ気になっていたことがあります。それは、ハイムシールドが少し厚みのある材料だったことです。
性能面では魅力的でも、現場で扱いにくければ意味がない。私たちのいちばんの心配ごとは、窓まわりの納まりでした。
サッシのまわりは、防水と熱橋対策がいちばん神経を使うところです。ここでシートが厚くて折りにくかったり、折り返した部分が膨らんでしまったりすると、見た目だけでなく、雨仕舞いそのものに響きます。
そこで、判断する前に確認の場を二段階で持ちました。
- 工場スタッフに確認 — サッシを壁パネルに取り付ける前の、窓まわりの熱橋対策と防水下処理。あの工程に厚みのあるシートを噛ませて、問題なくきれいに納まるか
- 現場の施工スタッフに確認 — 工場からの連携を受けたうえで、特に窓まわりの防水処理。折り返し部でシートが膨らんで浮いてこないか、二重になる部分でテープがちゃんと食いつくか
両方から返ってきた答えは、「問題なし、大丈夫」。むしろ厚みがある分しっかりしていて、折り返したあとも形が安定する、扱いやすい場面もある——という声もありました。
ここまで確認できて、ようやく切り替えに踏み切ったかたちです。
数字で並べると地味です。でも家は、こういう地味な積み重ねでできています。
30年や40年では、たぶん差は出ない。それでも選び直した理由
外壁の中の一枚の防水シート。お客様には絶対に見えません。営業トークの主役にもなりません。
正直にお話しすると、20年や30年というスパンで見れば、ウェザーメイトプラスもタイベックシルバーもハイムシールドも、どれもしっかり仕事をしてくれるはずです。岩手の家がふつうに住まわれていく時間のなかでは、目に見える違いは出ないかもしれません。
でも、家というのは50年、60年と先まで残っていくものです。そのくらいのスパンで見たときに、ほんの少しでも安心の余白が大きいほうを——それくらいの気持ちで、私たちは今回、ドイツ製のハイムシールドを選び直しました。
すでに以前のシートで建てた家も、これから建てる家も、どちらも自信を持ってお渡しできる。そのうえで、検証を重ねながら少しずつアップデートしていく——その途中の一手だと思っていただければ嬉しいです。
モデルハウスや完成見学会では、さすがに壁の中までお見せすることは叶いません。ただ、部材の実物をお手元に置きながら、「なぜこれを選んだのか」をお話しすることはできます。
スペックシートの数字を眺めるよりも、実際に素材に触れて、厚みや手触りを確かめながら聞いていただくほうが、50年後・60年後の家を想像しやすいかもしれません。
5月2・3日GW「住まいフェスタ」開催します。見学だけでも構いません。商談のご予定がない方も、ぜひ気軽にお越しください。当社HPから、最新の見学会情報をご覧いただけます。

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