8月8日、盛岡の日の出は4時40分。同じ日のベルリンは5時37分でした。
夏時間を導入しているドイツより、導入していない盛岡のほうが、時計の上では1時間近く早く朝が来ている。この事実を知ったとき、うちの始業時間の話が始まりました。
7都市の日の出と日没を並べてみた(今日8月8日時点)
私が出張で訪れたことのある海外の都市の日の出等をまとめてみました。
| 都市 | 国・地域 | 夏時間 | 日の出 | 日没 | 昼の長さ |
| 盛岡 | 日本 | なし | 4:40 | 18:42 | 14:02 |
| ワルシャワ | ポーランド | あり | 5:07 | 20:15 | 15:08 |
| ベルリン | ドイツ | あり | 5:37 | 20:47 | 15:10 |
| プラハ | チェコ | あり | 5:41 | 20:34 | 14:53 |
| 福岡 | 日本 | なし | 5:35 | 19:13 | 13:38 |
| シアトル | アメリカ | あり | 5:56 | 20:33 | 14:37 |
| バルセロナ | スペイン | あり | 6:53 | 21:01 | 14:08 |
7つのうち、日の出がいちばん早いのが盛岡です。そして日没がいちばん早いのも盛岡なんです。18時42分に日が沈む。ベルリンは20時47分ですから、2時間も違うってすごくないですか。
朝がいちばん早く来て、夜がいちばん早く終わる。ここ岩手の盛岡・滝沢でお日様を使い切ろうと思ったら、朝を使うしかない。数字はそう言っているように感じるのは私だけでしょうか。
明るい時間に、寝ていた
盛岡や滝沢に暮らしていれば、夏の朝が早いことは誰もが体で知っているはずです。4時台にはもう鳥が鳴いて、寝室のカーテンが明るくなっているのでわかりますから。
でも起きない。カーテンを引いたまま、8時前まで寝ている?
うちの会社もそうでした。そんなの当たり前なことだと疑問すら持たずに、事務所は8時45分に朝礼。その頃には日の出から4時間以上経っています。夏のいちばん涼しくて気持ちのいい時間を寝て過ごし、暑くなってから会社に現場に出て行く。振り返ると、なかなかもったいないことをしていたなと思います。
農家の人たちは、とっくに動いているのにです。
きっかけは、シアトルの夜
施主さんたちとシアトルに行ったときのこと。7月18日、ワシントン湖のサンセットクルーズを体験していただいたことがあります。
この日の日没は21時00分。夜の9時です。わかってはいても、時計を二度見してしまいます。
湖の岸に建つ家々に、まだ横から日が当たっています。空も青い。日本の感覚なら夕方5時か6時の光景ですが、これで21時前です。
そして日没。水面に光の道ができて、私の好きなヨットが一艘。
沈んでからも、しばらくこの明るさが続く。街の灯りが全部ついても、空の上のほうにはまだ青さが残っている。
外が明るいと感じられるのは21時40分ごろまで。水平線の光が完全に消えるのは22時半すぎです。夕方が終わらない、という感覚。あれは体験しないと分からない。
ワルシャワの夜10時と、スペインの明るい午後
シアトルだけではありませんでした。
7月のワルシャワ。夜10時になっても、空にまだ明るさが残っている。10時過ぎてですよ。写真は撮ったはずですが、保存していたドライブごと壊れて残っていません。記憶だけです。北緯52度のあの街は、夏になると太陽が地平線の浅いところまでしか沈まないので、光が消えきらない。夜9時過ぎに泳いでいる人がいたのも覚えています。
スペインでは、逆の方向で驚きました。シエスタがあるぶん午後の予定は後ろにずれ込むはずなのに、外に出るとまだ昼のように明るいという変な感覚。
これも数字を見たら納得します。バルセロナは太陽が真上に来るのが13時57分。盛岡は11時41分です。2時間以上ずれている。スペインは地理的にイギリスに近い経度なのに、ドイツと同じ時間帯を使っていて、そこに夏時間で1時間乗せている。時計が太陽より前に出ているわけです。体調整えるは大変ですけどね。
だから、あの国の遅い昼食も遅い夕食も、太陽から見ればずれていないことがわかる。14時の昼食は、太陽の位置でいえば正午の昼食です。
表に並べた7つの都市は、たまたま選んだ場所ではありません。シアトル、ワルシャワ、ベルリン、プラハ、バルセロナ。全部、出張で自分が立った場所です。どこでも同じことを思ったのです。
夜が長い、と。
そして帰ってくると、盛岡は逆でした。時計が太陽より24分遅れている。スペインとは反対向きにずれている。
朝のテレビを見ていたときです。全国の生中継が順に切り替わっていく。盛岡の映像はもう完全に明るいのに、福岡の映像はまだ暗いままなのです。同じ番組、同じ時刻なのにこんなにずれてる。
調べたら、日の出の差はおよそ1時間ありました。日本の標準時は明石の東経135度が基準です。東経141度の盛岡は太陽より時計が24分遅れていて、福岡は逆に18分早い。南中時刻でいうと盛岡が11時41分、福岡が12時24分。同じ「8時出勤」でも、太陽から見れば別の時刻に働いていることになるわけです
日本はひとつの時間で動いている。それは便利なんですが、盛岡に住んでいる人間から見ると、朝を43分ぶん損している。そんな気がしてきたのです。
お日様に従って働く。農家の人がずっとやってきたことが、たぶん一番理にかなっている。
試験導入から、2回作り直した
そこで、うちなりの夏時刻を試してみることにしました。
最初の形は、事務所が7時半始業、工場が7時始動。とりあえず1時間前倒しにしてみた、という段階です。ここから2回、仕組みを変えています。
今はこうなりました。
・事務所は7時45分出勤と8時半出勤の二本立て
・朝礼は8時半
・工場は通年で7時出勤
事務所を2つの時間に分けたのは、全員を同じ時刻に動かすと子育てスタッフに差し支えるからです。早い組が朝礼前の環境整備を行い、8時半の朝礼で全員が合流する。8時半出勤の者は、朝礼後に環境整備を行う。今のところ、この形が無理がないかなと。
工場を夏だけでなく通年7時にしたのには、はっきりした理由があります。うちは構造パネルを自社工場(こうば)で先につくって、建て方を1日で終わらせる工法を30年以上続けています。フレーミングの日は、朝から日没まで体を使い切る一日になります。夏だけ早起きにして冬に戻すと、体がそのリズムを覚えてくれない。だから通年で7時に揃えたのです。
冬の岩手で7時といえば、かろうじて暗くはありません。ここは正直、楽ではありません。朝時間が家族とはずれるはずなので。
朝4時40分の光は、家の設計にも効く
この話、働き方だけの問題ではないと思っています。
盛岡で4時40分に日が昇るということは、私の家がそうであるように東の窓には4時台から日が差すということ。私の家は寝室を東側に置いています。私の場合、夏に朝が明るすぎて眠れないということはないですが、朝日に照らされたカーテンからの輻射熱は敏感に感じてしまうほうかな。
一方で、その光を使えれば朝の時間が変わる。うちで気をつけているのはこのあたりです。
・寝室を東に置くなら、気になる方は遮光性能を先に決めておく
・リビングやダイニングに朝の光を回す配置を優先する
・東面と西面の夏の日射は、ガラスの内側ではなく外側で止める配慮を
3つ目については、東と西に外付けスクリーンを入れた実例があります。窓の外で日射を止めると、室内に熱が入る前に処理できる。夏の朝の東面は思っている以上に暑くなります。うちのサーモカメラでも、そこは毎年はっきり出ます。
朝が早い土地には、朝が早い土地の設計がある。断熱の話ばかりしてきましたが、光と時間の設計も同じくらい家の住み心地を左右します。
朝の時間の家を、見にきてください
盛岡は日の出がとても早くて、日没が早い。それなら朝を使ったほうがいい。うちが始業時間をいじり続けている理由は、突き詰めればそれだけです。
家も同じで、朝の光をどう入れて、どう止めるか。図面の上ではなかなか伝わらない部分でもあります。
滝沢にある当社のモデルハウスでは、午前の早い時間のご見学も可能です。東の窓から光がどう入るか、夏の朝に室内がどのくらい涼しいままでいられるか、実際に立って確かめていただくのが早い。ご希望がある方は遠慮なくお申しつけください。
体感するのが、一番ですから。

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