壁は工場でつくる。自社壁パネル30年の進化と、次の挑戦【岩手の2×4】

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建て方の朝、現場に着くトラックの荷台には、壁が立ったラックが積まれています。

初めて見た近所の方は、じっと見ていたりします。窓まで付いた壁が、そのまま現場に運ばれてくるからかと。

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滝沢で2×4の家をつくっているうちの壁は30年、現場ではなく自社工場でつくってきました。今日はこの壁パネルがどう進化してきたかついて、時系列でお伝えします。そして最後に、まもなく始まる次の挑戦の話を少しだけ。

なぜ壁を、現場ではなく工場でつくるのか

理由は昔からふたつです。雨と、精度。

岩手の天気は、工程表を読んではくれません。現場で屋根まで組み上げる期間が長いほど、構造材が雨に濡れる機会は増えます。壁を工場で先につくっておけば、現場での構造組み上げは一日で屋根まで到達することができます。これがうちの一日フレーミングという自社工法で、構造材を雨に濡らさないための段取りになっています。

もうひとつが精度です。工場なら0.1㎜単位の精度でカットできます。これは正確なパネルを製作するのに欠かせないものです。片や、現場で天気と競争しながら組む壁。どちらの寸法が安定するかは、言うまでもありません。高気密・高断熱は、断熱材の性能より先に、組み立ての精度で決まる部分でもあります。

ちなみにうちの工場スタッフは、年間を通して朝7時始業です。夏も冬も同じリズムでパネルを組む。精度は、こういう地味な習慣の上に成り立っていると思います。

1994年頃、パネルの寸法が変わった

壁パネルの歴史で最初の大きな転機は、寸法でした。

1992年頃、年に何度も通っていたシアトルの現場で、「お前たちは石膏ボードをなぜ縦に張るのか。天井も床も根太に直交で張っているだろう。その基本を壁でやっているだけだ」と逆に問われ、私は合理的に答えられなかった。この時の衝撃から2年調べて、1994年頃、設計を尺モジュールから北米型モジュールに切り替えることにしたのです。

最初の一棟は、尺で描かれた図面を強制的に北米型に直したものです。構造用合板は4×8判をオーダーで対応し、道具も変わりました。当時反対していた職人が、しばらくして言った言葉を覚えています。

「慣れれば、こっちの方が楽だ」

パネルの規格が合理的になったことで、工場での生産性も精度も一段上がりました。この切り替えの詳しい話は、長くなるので別の機会に。

2015年、壁パネルに窓が入った

次の転機が2015年。壁パネルに、窓を組み込んでから現場へ運ぶ方式にしました。

それまで窓の取り付けは現場での仕事でした。足場の上で、天気を気にしながらの作業です。これを工場に移すと、何が変わるか。

まず、雨仕舞いです。壁が建ったその日から、開口部はガラスで塞がっている。構造材だけでなく、開口部まわりまで含めて雨に濡らさない建て方になったのです。

次に、取り付け精度。窓は壁の性能の急所です。うちは窓まわりの熱橋対策の施工法で特許を取っていますが(ψinstall)、この施工をまず工場で前施工し、その後現場施工へとつなげています。品質の考え方で言えば、ばらつきの出る場所を、ばらつきの出ない場所へ移したということです。
そして、施工性もあがりました。

建て方の日、窓付きの壁が次々と建っていき、夕方には雨仕舞いの済んだ家の形ができている。30年かけて、ここまで来ました。

Q. 工場でつくると、間取りが画一的になりませんか

「パネル」「工場生産」と聞くと、規格品の家を想像する方がいます。それは私も感じていたことの一つです。確かに、パネルの効率性を考えたらそうなるでしょう。実際は逆です。

うちのパネルは、一棟ごとの設計図から起こす一棟ごとの専用品と言ってもいい。窓の位置も大きさも、その家の設計のまま。むしろ大開口のフォールディングドアや高窓のような、現場合わせでは神経を使う開口部ほど、工場の管理された環境でつくる意味が出ます。当社の工場生産とは「同じものを量産する」ことではなく、「同じ品質でつくる」ことです。

制約がないわけではありません。パネルはトラックで運べる寸法でつくる必要がありますし、建て方にはクレーンを使います。ただ、30年やってきて、この制約が設計の妨げになった記憶はほとんどありません。制約よりも、雨に濡れない・精度が揃うという施主にとっての利益のほうが、はるかに大きい。それが30年続けてきた理由です。

Q. 現場で組む工務店と、何を比べればいいですか

これから家を建てる方への実用的な話もひとつ。

構造材が雨に濡れることをどう考えるかは、会社によって本当に差があります。「多少濡れても乾けば問題ない」という考え方もあります。それもその通りで間違いではありません。絶対に濡らさないとは断言できませんが、うちのように「そもそも濡らさない段取りを組む」という考え方もあるということを知っていただけたらと思います。どちらの説明に納得できるかは、建て主であるあなたが決めることです。

比べるなら、質問はシンプルで足ります。「上棟までに何日かかりますか」「その間、雨が降ったらどうしますか」。この2つへの答えに、その会社の家づくりの思想が出るではないでしょうか。

そして今。次の挑戦は「強度」

で、ここからが次の話です。

壁パネルの次の進化は、断熱でも窓でもなく、強度です。3〜4年がかりになる見込みの、新しいチャレンジがまもなく始まります。

実は30年ほど前、開口部付きの2×4壁に水平力をかける強度試験を社内でやったことがあります。そのとき目にした課題が、ずっと宿題として残っていました。技術も材料も当時とは変わったいま、その宿題に取りかかれる条件が揃ってきた、ということです。

中身を話せる段階になったら、試験の様子も結果も、いつも通りこのブログで全部報告できるような結果にしたいですね。数字は嘘をつかないので。

30年続けてきた壁づくりに、まだ次があります。工場で生まれる壁がどう変わっていくか、いかないのか、楽しみにしていてください。

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