3階の窓に木の枝が届くパッシブタウンで見た「窓の外の設計」

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3階の部屋のドアを開けたら、目の前に木の枝葉がガラス越しに見えた。

見上げるのではなく、同じ高さで。葉が風で揺れて、その向こうに山が見える。正直、日本の集合住宅でこの景色に出会うとは思っていませんでした。以前シアトルで見た林の中にあるコンドミニアムの感覚に、いちばん近い。

富山県黒部市のパッシブタウン。YKKグループが社宅跡地に整備した街で、二つの住居を見させてもらったのですが、今回は3階の住居を、キッチンから順に紹介しようかと。

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窓の外を、誰も設計していない

家づくりの打ち合わせで、窓の話はよく出ます。大きさ、性能、サッシの色。でも「その窓の外に何が見えるか」まで詰めることって、実はあまり多くないのではじゃないかと。

先日、完成見学会を行った岩手県矢巾町のお宅では、窓の外に何が見えるかを意識し、2.5~3mほど植栽を3カ所に植えました。

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これは当社でも珍しいケースでしたから。

図面上は「南面に大開口」。実際に住んでみたら、見えるのはお隣の外壁と室外機。仕方なくレースカーテンを閉めっぱなし… 盛岡でも、そういうお宅を何軒も見てきました。

高い断熱性能のガラスを入れて、日射も計算して。それなのに、カーテンで閉じてしまう。もったいないと思うのですが、我が家もそうです。個人的には全部開けたい、でも開けたくないという人に私は勝てないという力関係があります。

わかります。土地の広さには限りがあるし、隣家がいつ建つかも読めない。設計段階でそこまでコントロールするのは、正直むずかしい。私たちも「見えないもの」までは約束はできません。

だからこそ、この住戸のつくり方が引っかかったんです。

キッチンは、あえて主役にしない

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まずキッチン。白い扉、白いワークトップ、ガラスの背面パネル。壁付けのI型で、寸法もごく標準的です。

拍子抜けするくらい、地味。

でも見学が進むにつれて、これは意図だなと思いました。キッチンを主張させると、視線がそこで止まる。手前を静かにしておくから、その先の窓と緑が効いてくる。玄関から入った人の目が、いちばん最後に届く場所に「良いもの」を置いている。

ダイニングからリビングへ、明るさが増えていく

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キッチンを背にして進むと、ダイニング。ここはまだ少し暗いんです。そして奥のリビングに向かって、光の量が段階的に増えていく。

一室空間なのに、明るさで場所の性格が分かれている。天井のペンダントも、あえて低めに吊ってダイニングを囲い込んでいました。

コーナーを開ける、という贅沢

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そしてリビングのコーナー窓。

これが今回いちばん唸ったところです。壁の入隅を、まるごと窓にしている。しかも木の枠で額縁のように縁取ってある。緑が二方向から入ってきて、部屋の奥行きが実際より広く感じられました。

構造的には、建物の角を開けるのは簡単ではありません。木造なら、耐力壁の配置をどう逃がすかという設計上の判断が要ります。私たちも開口部の補強手法をずっと研究していますが、「角を開けたい」という要望をいつか叶えたいものです。

寝室からも、外に出られる

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個室はコンパクト。机とベッドを置いたらそれで終わり、という潔い寸法です。そのぶん、共用部と外に面積を振っている。

面白かったのは、主寝室からもバルコニーに出られること。ダイニングからも出られるので、外部空間をぐるっと回れる。朝、寝室から直接テラスに出てコーヒーを飲む。
そういう暮らしが、間取りの側で用意されています。

床は木調デッキで、室内との段差も小さめ。「洗濯物を干す場所」ではなく「もうひと部屋」として扱われていました。

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バルコニーの手すり側は、縦格子の木製スクリーン。視線は切れるのに、山の稜線と空はちゃんと残る。閉じきらない目隠しです。

室外機を、見せない

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そしてここ。エアコン室外機と給湯機器は、横型のアルミルーバーで完全に囲われた専用スペースに納まっていました。バルコニーの「居場所」と、設備の「置場」がきっちり分けてある。

正直にいうと、住宅でいちばんだらしなくなるのがこの部分です。せっかく整えた外観に、後から室外機と配管が貼りつく。岩手だと、ここに雪が積もって効率が落ちるという別の問題もある。

機器の置き場所を最初から平面に描き込んでおく。それだけで、外観も暮らしも変わります。

最後に見つけた、天井の一本の線

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帰り際に見上げたら、壁と天井の取り合いが目透かしになっていました。廻り縁を回さず、細い影の線で納める仕上げ。

意匠の話に見えますが、実務的な意味もあります。異種材料の取り合いは動くもので、影の線で逃がしておくとひび割れが目立ちにくい。こういう納まりを黙ってやっている現場は、たいてい他も丁寧です。

岩手に持ち帰るなら、この3つ

盛岡や滝沢で同じことをそのままやるのは、条件が違いすぎます。ただ、考え方は持ち帰れると思っています。

  • 窓の外に、自分で植える。 隣家は選べませんが、落葉樹は選べます。夏は葉で日射をやわらげ、冬は落葉して日を通す。岩手の気候と相性のいい遮蔽です。
  • 明るい場所を、いちばん奥に。 玄関からいちばん遠いところに、いちばん良い窓を。動線が短くなくても、暮らしの質は上がります。
  • 室外機の場所を、最初に決める。 積雪と外観の両方に効きます。あとで決めると、たいてい妥協になります。

実際に立ってみるのが、いちばん早い

窓の外に何が見えるか。その一点で、家の居心地はずいぶん変わると思います。

矢巾のお宅でも、樹木を選び、窓高さ、外部への目線から、図面に落とし込んでいた樹木の位置は、現地で実際に立ってみて位置を修正することになりましたから。

窓の景色を変える。そのための植樹って大切に扱いたいものです。

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