岩手県北上市で、昨日今日の二日間の見学会でした。
たくさんのご来場をありがとうございました!
暖房シーズンの入り、やっと断熱や各部の性能を体感してもらえる季節になりました。
そうなると、私の関心はがぜん盛り上がります。
昨日と今日、現地にて温度チェック。
そのとき、床暖房が入っている床を、サーモカメラで撮ってみました。
すると、配管が、、、映りません。
床面は24.0℃。ヘッダーで測った戻りの配管は23.5℃。お湯と床の温度が、ほとんど同じだったからです。35年床暖房をやってきて床にある温度差を拾えなかったのは初めてです。今日も、もう一度測っても、同じでした。


なぜ、床暖房の温水温度がここまで低くて済むのか。順番があります。断熱、日射取得、蓄熱。この3つです。
床暖房は、なぜ熱いお湯が必要だったのか?
断熱性が低ければ、家から逃げる熱を、熱い温水で補っていたから。
床暖房を始めたころの熱源は灯油やガス。最低設定でも35℃以上で、床が熱すぎました。床に布団を敷いて寝られない。畳の部屋には床暖房を入れない。そんな時代が長く続きました。
高断熱住宅には「床暖房は暑すぎる」「光熱費が心配」。そう感じている方も多いと思います。その感覚は、間違っていません。私たちも、そこで何年も悩んできましたから。
熱源は、灯油・ガスから、ヒートポンプへ。
試しては、やめたものもあります。けれど振り返ると、お湯の温度を本当に下げたのは機械の進歩ではありませんでした。
変わったのは、熱源ではなく家の方です。
断熱:まず、熱の逃げ道をふさぐ
今回の見学会の家の壁は、厚さ30cmあります。
内側から、2×6の枠組みの間に充填断熱140mm。その外側に、フェノールフォーム外張り断熱50mmを二枚。二枚は継ぎ目をずらして重ねています。継ぎ目がそろうと、そこが経年で熱の通り道になるリスクがあるからです。
充填断熱だけだと、木の部分から熱が逃げます。これが熱橋(ねっきょう)。外側から家全体を包めば、木の構造ごと覆えます。
足元も同じです。床下で断熱するのではなく、基礎の外側に断熱材120mm。壁の外張り断熱は、その上に途切れずにつなげています。冬の岩手で凍える地面から、家をまるごと切り離すためです。
窓も同じ考え方です。外壁の面から窓の枠まで、14cm。窓を壁の奥に入れ、枠の外側まで外張り断熱で覆っています。冷凍庫を使った比較ボックスでは、この施工で9.9℃の差が出ます。
窓まわりの熱橋対策を始めてから、床暖房のお湯の温度が急に下がった。現場での、正直な実感です。
断熱の構成は、以下の動画がわかりやすいです。
壁の厚さ、30cm。
2×6の柱の間に、断熱材を140mm。
その外側に、50mmの断熱材を二枚。
継ぎ目をずらして、重ねる。
外壁の面から窓の枠まで、14cm。
窓が、壁の奥にある。
この家、今週末に見学会をします。
壁の厚さは、数字より体感で。#高断熱住宅 #岩手 pic.twitter.com/SPLEQ5Fiov
— 親方|岩手の高断熱住宅 (@ooyakata11) October 29, 2026
日射取得:冬の太陽を、暖房に使う
熱が逃げにくくなると、冬の日差しが効いてきます。
岩手の冬は寒い。それでも、晴れた日の南の窓からは、かなりの熱が入ります。窓から入った日射が、そのまま室内を温める。ダイレクトゲインと呼ばれる考え方があります。
窓は、熱が逃げる場所であり、熱が入る場所でもあります。だから窓まわりの断熱を固めておく。逃げる側をふさいでおけば、入ってきた熱がそのまま家に残ります。断熱が先、日射が後。この順番に意味があるのです。
ただし、高断熱の家では困ることもあります。熱が逃げないぶん、昼に日射が入りすぎると室温が上がりすぎる。暑すぎる現象、オーバーヒートです。
ここで、3つ目の蓄熱が出てきます。
蓄熱:昼の熱を、夜に回す
ドイツの家づくりでは、蓄熱がとても重く扱われています。
ドイツでは新築のとき、冬の断熱とは別に、夏に室内が暑くなりすぎないかの検証が求められます。そこで物差しの一つになるのが、家がどれだけ熱をためられるか、です。
ドイツの規格DIN 4108-2では、夏の室温上昇の検証に、建物の蓄熱の大きさが組み込まれています。建物は「軽い・中くらい・重い」の3つに分けられ、重い建物ほど条件が有利になる仕組みです。重い材料は熱をため、時間をずらして返すmことができます。一日の温度の上がり下がりが、緩やかにならされるからです。
逆に、軽い建物は温まるのが早い。極寒の日にすぐ部屋を暖めたいときは、軽さが有利に働く場面もあります。どちらが正しいという話ではなく、ためる量を計画する、という考え方です。
木造は、この分け方では軽い側に入りやすい。だから私たちは、床に重さを足しています。
床合板の上に、2×4一枚分の層を設け、その中に床暖房の配管とモルタルの蓄熱層。その上に無垢の床。そして、壁の仕上げは漆喰です。
モルタルと床材の間には、2〜3mmのすき間を残しています。昔の土間床方式では、床材のすぐ下がコンクリートで、見学会を一日案内すると膝が痛くなりました。重さは欲しい。でも、暮らす方の足裏は硬くしたくない。その折り合いですね。
昼に窓から入った日射の熱を、床のモルタルにため、漆喰の壁にも吸わせる。室温の上がりすぎを抑えて、外気温が下がる夕方から夜に、その熱を室内へ返す。基礎で断熱しているので、床下も室内とほぼ同じ温度に保たれています。
ためる量が大きいと、暖房の温水温度は低くていい。少しずつ、長く、床全体を温めればいいからです。施主さんの中には、暖房を朝の1.5時間だけ動かすのが一番省エネだった、と見つけた方もいます。家そのものが、熱をためておく器になっているということだと思います。

3つがそろうと、お湯の温度はどこまで下がるのか?
2025年11月、滝沢市の住まい手の家で、1階だけの床暖房を温水25℃台で回せていることを確かめました。2026年3月には、盛岡市の見学会会場でもう一度。そして2026年10月、サーモに配管が映らない床に出会いました。


住まい手の家で見てきた室温は21〜22℃、床の表面は24〜25℃くらい。床暖房の温水温度は、床とほとんど変わらない温度まで下がってきています。
私たちが目指しているのは、室温と床面温度と温水温度を、限りなく同じ温度にすること。熱いものも、冷たいものもない家です。
「もう戻れない」。
施主さんからその言葉を聞くようになったのは、低い温度のお湯で暖房できるようになってからです。
この床、床暖房が入ってます。
でも、サーモには映らなかった。
お湯と床の温度と室温が、ほとんど同じだから。
サーモカメラでチェックするようになって、初めて見た画面。 pic.twitter.com/VGkBFl0GfC
— 親方|岩手の高断熱住宅 (@ooyakata11) October 31, 2026
晴れた日の昼、高断熱の家は暑くなりすぎることがある。
特に、冬の始まりと終わりの頃に。
日の当たった床は、30℃を超える。
その熱を、無垢の床の下のモルタルに溜める。
夜、外が冷えたら、床から部屋へ戻す。
床暖房のためにつくった層が、太陽の熱も受け止めている。
ためて、戻す。… pic.twitter.com/Z1Ql84axjy
— 親方|岩手の高断熱住宅 (@ooyakata11) November 1, 2026
実際の温度は、どこで確かめられる?
断熱も日射も蓄熱も、数字だけではなかなか伝わりません。
壁の厚さは窓の奥行きで。
蓄熱は床に手を当てた温度で。
漆喰の壁は、触れたときの感じで。
床に素足で立ったときの感じは、行ってみるのが一番早い。
滝沢市の住宅展示場では、壁の断熱の違いを比べられるようにしています。完成見学会の案内は、ページ下のリンクから。見るだけでも大丈夫です。
よくある質問
Q. 低い温度のお湯の床暖房でも、寒くない?
家の断熱が高ければ、床の表面とほぼ同じ温度の温水でも暖房できます。私たちが住まい手の家で見てきた室温は21〜22℃、床の表面は24〜25℃くらいです。逃げる熱が少ないぶん、熱い温水で補う必要がなくなります。
Q. 住宅の「蓄熱」とは何ですか?
重い材料に熱をためて、時間をずらして室内に返すことです。昼の日射の熱を床のモルタルや漆喰の壁にため、外が冷える夕方から夜に放出。一日の室温の上がり下がりが小さくなります。
Q. 木造の家でも、蓄熱できますか?
できます。木造はそのままだと熱をためる量が小さいので、重さを足します。私たちは床合板の上にモルタルの蓄熱層を設け、そこに床暖房の配管を通しています。壁は漆喰です。この漆喰の厚さを増やすことで蓄熱量を増すことも可能です。
Q. 高断熱の家で日射を入れると、暑くなりすぎない?
蓄熱がないと、暑くなりすぎることがあります。熱が逃げないぶん、昼に入った日射で室温が上がりやすいからです。その熱を床や壁に吸わせて、上がりすぎを抑えます。
Q. ドイツでは、なぜ蓄熱が重視されるのですか?
夏の室温上昇を抑える検証に、建物の蓄熱の大きさが組み込まれているからです。ドイツの規格DIN 4108-2では、建物を蓄熱の大きさで「軽い・中くらい・重い」に分けて評価します。
Q. 断熱・日射取得・蓄熱は、どの順に考えればいい?
断熱が先です。逃げ道をふさいでから日射を入れると、その熱が家に残ります。たまった熱を蓄熱で一日にふり分ける、という順番です。

コメントを残す