Zugunasu

飛行機の窓から陽射しが差し込みぽかぽかと温かかったせいか
いつの間にかうとうとと軽い眠りに。

夢心地の遠い意識のなか、カタカタっとした軽い振動。
飛行機がぐーっと傾き座席が身体からスーッと離れる。
次の瞬間そのまま支えを失ったように身体も落ちる感覚が襲う。

　急旋回、急降下だ！

そう気付いた瞬間、カッと目を見開き機内を観ると
スチュワーデスがやさしい笑顔で飲み物をサービス中。
と、何事もなく静かなもの。

　夢か・・・
　四日前の恐怖感がまだ残ってるのかなあ。

そして高鳴っていた心臓の鼓動も落ち着き再び眠りに。
そしたら、再び同じ状況に襲われパッと目が覚めた。

　おいおい、オレってもしかして・・・
　潜在的に飛行機恐怖症にでもなってるの？

自分の状態が不安になり、試しに意識を残しながら目をつむってみる。
すると、やはりふとした拍子に車体が右側に急旋回で降下する感覚が。
我に帰るも心臓はバクバク。
なのにしっかり意識を保つと不思議に気持ちは落ち着いた。

　それにしてもやはりオレの平衡感覚がおかしい。
　4日前のあの恐怖を身体が記憶してしまっているようだ。

今回の出張で飛行機に搭乗すること６回。
事件はそのうち２回目に乗った飛行機の時。
安定高度に差し掛かったあたりだったか、
気流のため頻繁に機体が揺れはじめる。

　気流で機体が揺れるのはよくあること、気にしないでおこう。

そう思った瞬間、機体は大きく傾き急旋回上昇。

　おおお、、、Ｇがかかるー！！！
　ジェットコースターみたいだべぇ。

と心ん中でぼやきながらじっと息を止めていた。
しばらくして機体は立て直し、やっと深く息を吸い込むことができた。

　方向転換にしても実に操縦の荒い機長だべ。
　今日は機長の当りが悪かったんだな。

と、ここまでは良かった。

またガタガタと揺れたと思ったら
ググーッと、さっきとは逆の左側に急旋回して下降し出し、
ガタガタガタ！！！と機体は旋回しながら激しく揺れる。

　おおおおお、、、、、、
　何だ何だ、どうしたんだ！何があったんだあ？！！

息を呑み窓外に目をやると、折れんばかりに翼は激しく跳ねている。
　
　飛行機の機体って空中で折れることってないんだべが。。；

急に不安が。。；

そして・・・

　きっ、きたー！
　またきたー！！！
　こうなると普通じゃねえべ。何がおごってんだべよお・・；
　戦闘機の訓練じゃないんだがらよ。　。　。

何十秒かして、機体は平衡を取り戻す。

　ハア、ハア、ハア、、、

呼吸が整う間もなく、またまた急旋回が！！

　この飛行機って前方の障害を避けてるとしか考えようがない。
　気流の塊り？
　機長にそんなの眼に見えるんかい！？

さすがに３回目の急旋回になると、
昔ＳＦ映画で観た急旋回しながら隕石を避ける飛行艇やら、
ジェット戦闘機の飛行シーンが頭をよぎる。

　オレってもしかしたら・・・　ここまで。なの。。；
　いや、大丈夫だべ。
　ここで終わり！っつうごどぁねえべ。

とかなんとか、一人で二役の会話。
自分の身体の傾き、押し付けられるＧ、スーッと落ちる
あの何とも言えない感覚や叩かれる機体に、足で床を突っ張り身体は硬直。

定かではないが、この繰り返しが４～５回。
時間にしたら・・・（長く感じたけど）実際10分くらいか・・

飛行機に乗ること何百？回。
これまで気流で機体が激しく揺れるなんてことは何度もあった。
ガクッ！と大きく沈んだりしたことだってある。
しかし、今回のような状況に加え急旋回の繰り返しなんて初めてのこと。

私以外の乗客の状況と言えば、旋回が収まった時に
ほんの少しどよめいた程度。そんな周囲の反応に

　恐かったのって、もしかして・・・オレだけ？
　おれって・・・　”ずぐなす”なんだべが。

と、その後平静を取り戻した機内で落ち込んでいたが、
飛行機は目的地に無事着陸。

機内からタラップに出て歩き出すと私の後方より
「いやあ、恐かったなあ。これで終わりかと思ったがに。」とこんな言葉が。

　恐かったの、、、オレだけじゃながったんだ・・・

とひと安堵したものの今日の症状はやはり気にかかる。
今日の自分の症状からすればきっと潜在的に少しの後遺症はある。
そう、きっとこれって、ーZugunasu症候群ー

そんな自分に気付いたからだろうか
今度飛行機乗るのがぺっこ恐い。。

  　　註：”ずぐなす”〔zugunasu〕とは、
　　　　　①意気地がない（者）②勇気・度胸がない（者）という意味合い？
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（親方方言集より）