ビール一杯の裏ワザ？

私が最近たまに行くチョイ呑み屋さん。
私は独りの時はいつもカウンターなんだけど、
その日は賑わっていて、見れば残席一つ。

先客さんが置いてあったバッグをのけてくれて何とか座席確保。
私の左隣りは3人グループ。（おっさん一人に若い者二人）
焼酎のジャイアントボトルを真ん中に、
みんなで酌し合いながら飲んでたし、話してる雰囲気から職場グループかと。
そう思ってた。

それがしばらくすると、若い衆二人はおっさんを残し別の席に移動。

　あれ？ケンカでもしたのかな・・
　説教じみた話してたからな、おっさんは。

そう思っていると、そのおっさんはトイレに席を立つ。
その時、一人で来ていた常連のクールなおじさんがお店の人に、

　気をつけた方がいいよ。
　あの人ビール１杯しか頼んでないよ。
　ずっと他人の焼酎しか飲んでないから。

　　他人？
　　知り合いでもなかったんだあ・・

と、自分の勘違いに気付かされた。
そして、そのおっさんは戻ってきて独り言をブツブツ、
そこら辺に置いてあったおもちゃのモデルガンなど手に持っては、
「これは〇〇だな、」とか言いながら弾奏を抜いたりしてた。

そして「酔った」と言い、水を頼んでそれを飲む。
それから、グラスの水滴で汚れたカウンターを
手拭き用の濡れタオルで拭き始めた。

グラスの位置を何度も行ったり来たりと替え、すごい念入り・・；
ご丁寧にグラスの水滴まできれいにふき取っている。

　　　　このおっさんて・・・
　　　　酔うと几帳面な性格になるんだあ。

そう思ってるとそのおっさん、またトイレに立った。
その時、クールなおじさんがまた口を開く。

　　やばいな。
　　あれって、一生懸命、自分の指紋拭き取ってるよ。
　　やはり勘定の時、気をつけた方がいいよ。

このクールなおじさんとは何度か顔合わせながら、
一度も会話したことなかったけど、この時は条件反射的に私も、

　　　　えっ、そうなんですか？
　　　　あれって指紋拭き取ってたんですか！？

　　だって、食器をきれいにふき取っては、
　　すぐ食器を下げさせてたじゃない。
　　あれは確信犯だよ。
　　指紋拭きとるなんて。
　　でも、普通の人はそこまで考えないけどね。

　　　　そ、そうなんですか・・
　　　　（今一、その話を信じれきれてない私）

そこにおっさんは再び席に戻ってきた。
それからも・・・念入りのお掃除は続く。
手に持って遊んだモデルガンも念入りに、
弾奏も取り出し向きを替えては何度も何度も拭き拭き・・

いくつ破いて使ったんだろ？ってくらいの濡れティッシュの数。
意識して隣りのおっさんの動作を窺がってると、

確かに・・・
クールなおじさんの言う通りなのかもしれないなぁ・・・
そう思えてくる。

が、まだ半信半疑。

そしてこともあろうにそのおっさん、
何を思ったか、今度はしゃがみ込み、足元にあった屑箱をあさる。

ペットボトルを２本取り出して・・・

それを濡れティッシュで、

拭き出したあ！！

こ、これはもう、
クールなおじさんの見立て通りかも！？

この時間、いつもならお勘定して帰る私も、
この事件の顛末を見届けたくなってしまい、追加で水割りを＾＾；；

そのおっさんは再びカウンターを拭き、

　　そろそろ、勘定して帰るかな・・・

とか言い、布袋をポケットから取り出す。
カウンターにじゃらじゃら～と広げた小銭。

　　　（けっこう、あるじゃん！）

と思ったら私の勘違い。

それって・・・ゲームセンターのコインなんだとか。

　　　（はあ！？）

でしょ。そしておっさんはやっと、

　　勘定して！

と言った。
少しの間を置いて、お店の人が勘定の紙を手渡すと・・・

そのおっさん、

　　ん・・・・

　　高えな。

　　・・・・

　　なんでこんなに高げえんだ？
　　オレぁ、ビール１杯しか飲んでねえぞ！

それに対してお店の人、

　　　お通し分も入ってますから・・・

　ん？お通し！？

　ウン、お通しはうまがった。
　でもお通しはサービスだべ。
　おれはサービスだと思っておいしく食べた。
　だけど、お金を取られるなんて思ってなかったなあ。

（そう来たかあ・・・）
このおっさん、こっからがすごい。

　オレは、店に入る前に聞いたよね。
　ビール１杯いくらか？って。
　そしたら、「１杯500円です」って言うから、
　それなら１杯だけなら飲めるかな、そう思って店に入って飲んだんだ。
　まさか、お通しが有料だなんて聞いてたら、俺は店に入ってない。
　オレは500円しか持ってないもの、払いたくても払えないな。

ここまで言われてお店の人たちは口あんぐり。
顔しかめて困った様子ありあり。
だったところに・・・
クールなおじさんが発した一言。

　いいよ、私がお通し分その人にご馳走するから。

（か、かっこいい・・・）

そんな締めで、おっさんは
「俺はビール１杯しか飲んでねえから・・・」とかぶつぶついいつつ、

　ここ、いい店だよなあ。また来るから！

　　（何それ？来てほしいわけないだろうよぉ・・；）

手を上げて出て行ったのでした～＾＾

すごいですよね＾＾
世の中にはいろんな人がいるものです。
周到に筋立て、隣の人に話かけ他人のお酒を散々飲んだ挙句、
指紋拭き取り、最後お通し代をぶっ飛ばし、500円で半無銭飲食？
それに気付かず能天気な私のような者がいれば、
その行動に気づき、注意を発する眼力者がいるんです。
ちょっと、自分の未熟さを思い知らされましたね。

それから、お店の人やクールなおじさんとしばし談笑。
その中でお店の人がクールなおじさんに言いました。

　お通し代、払うなんて言わなくもよかったのにぃ、
　お店で持ちますから。

そしたらクールなおじさん、

　　いいんだよ、
　　ボクの酒がマズくなりそうだったから。
　　自分のお酒のために払うんだから。
　　だからいいのよ。

　か、かっこいい～！！

かっこいい人は最後までかっこいいのだ。
クールおじさん曰く、
自分の座席から正面の位置に座ってたから、よく観えたんですよ。
とは言うけれど、その眼力たるややはりすごい。
最後に私は、ホッピー一杯でその日を打ち上げ。
クールなおじさんのおかげで最後はおいしいお酒を頂くことができました。

クールなおじさんの歳は？
・・・・　私より十とちょっと？くらい先輩でしょうか。

私もあのクールなおじさんのように・・・
かっこよく歳をとれたらいいんですけどね＾＾；

おバカな岩手のハウスメーカーなら。