なぜこんなに違う?樹脂サッシから見える日本とドイツの住宅文化の溝

昨日、樹脂サッシの耐久性について簡単にまとめました。家づくり教室でも、日本の住宅性能特にサッシで観るところの遅れは欧米どころか中国韓国もより遅れていることを話すと、返ってくる質問が、なぜ日本はそこまで遅れたのですか?というものです。

正直、昨日の樹脂サッシの耐久性についてまとめながら最後には気落ちしてしまいました。同じサッシなのに余りに観ている世界が違うような気がして。そこで今一度自分の中でAIさんの力を借りながら整理する意味でまとめてみたいと思います。

ドイツサッシが内付け窓の意味の画像

ドイツと日本の樹脂サッシの違いはどこから

皆さん、窓の「樹脂サッシ」という言葉を聞いたことがあると思います。近年、住宅の断熱性能が注目される中で、ここ30年ほど前から耳にするようになってきた言葉です。実は、この樹脂サッシ、日本製とドイツ製では耐久性や性能に大きな差があることをご存知ない方が殆どではないでしょうか。

今回は、なぜこのような違いが生まれたのか、その歴史的・社会的背景について探ってみたいと思います。

 1. 始まりの違い:時代背景が決めた樹脂サッシの方向性

戦後に日本とドイツの目指すものが違ってしまったようですね。高断熱化と耐久性を求める意識のあったドイツとそこに目が向かなかった日本。確かに・・断熱が省エネだと考えるようになった始まりは岩手の住宅に断熱材が採用されるようになった40年位前でしょうか。

ドイツ:戦後復興と環境意識の芽生え

サッシ建具枠の見え方:ドイツサッシの画像

ドイツで樹脂サッシの開発が始まったのは、第二次世界大戦後の復興期1950年代のようです。木製サッシでは80年前には既にトリプルガラスが使われるようになったドイツですから、寒冷な気候と限られた資源を効率的に使う必要性から、高い断熱性能と耐久性を求める意識が高かったのでしょうね。。特に1970年代のオイルショックは、エネルギー効率の重要性を社会に強く印象付けた。いかに暖房費を抑えるかは、まさに生活の質に直結する課題だったわけです。

日本:高度経済成長期の”駆け足”発展

サッシ建具枠の見え方:国産サッシの画像

一方、日本で樹脂サッシが本格的に導入されたのは1970年代後半。ここで30年近く遅れを取っています。すでにアルミサッシが住宅市場で確固たる地位を築いていた時期です。高度経済成長期の「より早く、より安く」という社会要請が、樹脂サッシの開発にも大きな影響を与えたようです。

 2. 住宅に対する根本的な考え方の違い

欧米の住宅をずっと観てきて思うのは、住宅に対する考え方が根本的に違うってことでした。一番最初の驚きはアメリカでは中古住宅が古いからと言って価値が下がるものではないこと。むしろ資産価値は古ければ古い程上がるということだったかと。日本なら建てた瞬間から目減りするのは当たり前なのにです。

ドイツ人の「100年住宅」という概念

ドイツでは、住宅は「次世代に引き継ぐ資産」という考え方が一般的で、100年以上の使用を前提とした住宅建築が当たり前。その中で使用される建材等にも、当然のように高い耐久性が求められたのだと。

日本の「30年住宅」文化

ドイツと対照的に、日本では住宅の平均寿命が30年程度。「スクラップ&ビルド」という言葉に象徴されるように、建て替えを前提とした住宅文化が定着しまったのです。この背景には、地震国という特殊性や、新築至上主義的な価値観も影響しているようです。

 

3. 品質に対する社会的な価値観の違い

ドイツで一番最初に感じたのは、金物に対する耐久性に対する意識、頑丈であることへのこだわりでした。日本のモノよりはずっと効果だけれど、長く使い続けるものだからという意識はかなり高いと感じたものです。

ドイツ:職人精神と品質第一主義

ドイツでは、製品の品質は妥協の対象にはなりません。樹脂サッシの製造においても、前投稿でもお伝えしたように、厳格な基準が設けられています。日本でも職人気質と言いますが、ドイツは日本以上に製造部門での職人の誇りは高く(特にバイエルン地方)、「日本に売りたいとは思ってない、俺たちの製品は地元で充分売れる品質だから」とドイツの展示会で言われたこともあるほどですから。

・PVC樹脂純度:90%以上
・製品寿命:40-50年
・品質検査:X線検査、熱サイクル試験など、徹底した検証

ドイツのサッシ高断熱化推移の画像

ドイツの樹脂サッシ枠の見付け幅の推移を示しています。70mm ⇒ 85mm ⇒ 100mmへのと推移しながら樹脂枠の断熱性能を上げ且つ施工でより高い断熱性能に向上させることが可能なように変化しています。では日本の樹脂サッシはどうだと思われますか?

日本はドイツとは逆で、見付け面積をより細くしてトリプルガラスの割合を上げることでサッシ全体の断熱性能を上げています。これは樹脂枠の断熱性能を上げようとするドイツの試みとは違い、小手先の手品に近いものを感じてしまうのは私だけでしょうか。

日本:コストパフォーマンス重視の姿勢

日本市場では、必要十分な品質を確保しながら、いかにコストを抑えるかが重視されてきました。

・PVC樹脂純度:80-85%
・製品寿命:20-30年
・品質検査:外観検査中心の効率的な検証

4. 環境意識の目覚めた時期の違い

この環境に対する意識は、ドイツでは建築現場を案内してくれたタクシードライバーさんまでも、工事現場を指さし、環境に負荷をかけないものを採用することが最終的に人間の暮らしを豊かにするのだと語ってくれたことを今でも思い出します。

ドイツ:早期からの環境配慮

1970年代から環境問題への関心が高まり、建材においても環境負荷の低減が重要な課題として認識されていました。樹脂サッシの開発でも、有害物質の削減やリサイクル性の向上が重視されました。

日本:後追いの環境対応

日本で環境配慮が本格的に意識されるようになったのは比較的最近のこと。樹脂サッシの開発も、まずは普及を優先し、環境対応は段階的に進められてきました。

日本とドイツの住宅文化の違いのまとめ

その他、技術開発の方向性の違いで、ドイツは基礎研究重視で長期的な視点での技術開発なのに対し、日本は生産効率重視で短期的な成果を追求してきた結果が現在の現状を生み出したのだとか。

最近日本でも住宅の長寿命化や環境性能への関心が高まっていますので、樹脂サッシの品質も着実に向上しつつあるようです。今後は、日本の効率的な生産技術とドイツの高品質な製品づくりの良いところを組み合わせた、新しい展開も期待できるかもしれません。

但し、その前提として窓周囲ヒートブリッジなどドイツと同レベルの問題意識と長期的視点は欠かせないものだとは思います。同じ方向を観れるようになるのはいつ頃になるのかは検討も付きませんが。