当社は住宅資材を直で輸入するようになり、もう30年にもなります。よくここまで続けて来られたものだと、工場に輸入コンテナが入る度に振り返ってしまいます。その半面、直輸入してなければ今の家づくりには到達していなかったんだろうなあとも思うのです。

住宅資材を欧米などから直輸入することには多くのメリットがありますが、一方でデメリットもわるわけです。物量は少ないけれど、30年の直輸入経験だけはありますのでそのポイントについて整理してみます。
小さな工務店でも直輸入できるのか
初めてのアメリカで見た豪邸やホームセンターで確認した資材の価格の安さに驚き、あの家が岩手に届けられるならぜひ輸入したいよなあって思ったわけですが、ここで不安がよぎります。
英語を話せないのに輸入なんて可能か
今なら翻訳アプリがありますけど当時はそのようなものはありません。ズーズー弁と日本語ならバイリンガルでも高校入学時、英語の授業が周1少ないという理由で理数を選んだほど英語が苦手な私です。その不安を打ち消してくれたのは、アメリカシアトルに設立した会社の社長になった人が日本人だったという簡単な話でした。
何を輸入すれば良いのかわからない
住宅を丸ごと輸入するわけではない。住宅資材・建材を輸入するのだけど、何を輸入できるのか、何を輸入すれば良いのかわからない。そこでお誘いをくれた社長に尋ねると、輸入したいものを輸入すればいいと言う。そう簡単にい言われても・・と当時は思ったものです。
どのくらいの量を注文しなければならないのか
海上コンテナで輸入するのだと聞かされても、そのコンテナいっぱいに資材を入れるとどのくらいの量で金額はどのくらいになるのか・・もわからない。
解決策:
先ず、見積りを取る ⇒ 少量なら混載便もしくは共同輸入として他社のコンテナに入れてもらう
通関?輸入手続きなんて私たちでもできるのか
すべてが経験してないことなのでわからないことばかりだけど、失敗しても良いから先ずはやってみる!しかない。出荷~船便の手配はアメリカ側、横浜での通関はこちら側の責任で。紹介された通関業者にて輸入資材の素材等すべてを説明しなければならないのです。でもこれも経験してみて解りますが、初輸入のものだけ。同じものを輸入する場合は通関業者に資料があるので次回以降は手間はかからない。
※通関業者が替われば一からやり直しになります。
住宅資材を直輸入することのメリット
住宅資材を地方の工務店でも直輸入できたことで様々の恩恵を受けることができるのは大きな魅力です。それらについて簡単にまとめると、
住宅資材のコストダウン
何より一番最初に感じた魅力は価格です。その後、価格/2、日本で得られない情報/2と思うようになったのは、Low-Eガラス、トリプルガラスなど、日本にないものが海外にはある!ことを知ったからですが、
中間マージンをカット
国内の流通業者を介さないため、流通コストや代理店の手数料はかかりません。それにストック場所が田舎ですから土地コストは無いに等しいことも当社にはメリットになったように思います。
住宅デザインや高品質な資材
国内では手に入りにくいデザインや機能性のある資材を採用できること。欧米の厳しい品質基準をクリアした製品が多く、長期的な耐久性やメンテナンス面(例えばサッシの樹脂純度とか)でメリットが大きい。
住宅トレンドを先取りできる
欧米の最新のデザインや先端技術をいち早く取り入れることで、施主の期間損失を無くすことでき住宅の付加価値を高められる。
※特に、日本では議論もされないψinstallなど、国内より進んでいる貴重な情報を入手できるのは、断熱性能に重きを置く当社にはとても興味深いものでした。
特注品・オーダーメイド対応
自社のこだわりに合った施主の要望に細かく対応できるなど、特に国内の標準的な建材では出せない質感や風合いも魅力です。
※ヨーロッパからサッシを輸しようとすると日本にあるような「サッシに規格サイズがない、注文サイズでつくるのみ」ことからも分かります。
住宅資材を直輸入することのデメリット
直輸入はメリットもありますが、特に価格メリットを主目的にしてしまうと、地方の工務店にはデメリットの方が大きいかもしれませんので、そのことについて。
直輸入の為替リスク
輸入品は為替レートの変動に大きく左右されるため、仕入れコストが読みにくいことや円安時には価格が高騰し、コストメリットが薄れる可能性がよく言われるのはその通りです。ですが、ある時期から国内では得られない情報入手と技術導入が目的になると、為替リスクはそれほど大きなものではなくなってしまったのです。
日本の建築基準との適合性を国内で再確認
輸入した建材が輸出国では日本の建築基準法や防火基準を満たす性能を有していたとしても、改めて国内で試験を行う必要が生じる場合があります。これは地方の工務店にとっては大きな負担になります。
輸入代金の支払い負担と納期リスク
国内で資材調達する場合なら工事現場に資材が納品されてからの支払いが一般的です。ところが直輸入の場合、注文時に全額外国送金するので、国内調達と比べ、8~10か月早い資金負担となります。その上、特にヨーロッパからの海上輸送は北米航路と比べて、天候や寄港先の数によって納期が大幅に遅れることもあるため、そのリスクを読み込んだタイミングで発注しなければなりません。
施工の難しさ
大工さんや施工業者が取り扱ったことのない材料の場合、施工技術の指導やマニュアル作成が必要になります。初めてアメリカから輸入した時は、英語で書かれた説明書なんて誰も読めません。幸いに解説図があるとあれやこれや想像しながら施工法を探ったものです。現在は便利な翻訳アプリもありますからね、今では笑い話です。
物流機能の確保
地方の工務店にとって、これが一番の問題かもしれません。輸入した住宅資材を、➀ストックする場所・倉庫、そして②荷受けする機能、③現場へ配送する機能、これら建材会社とまでは行かずとも同じ機能を持たなければなりません。
住宅資材を直輸入することのメリット・デメリットまとめ
直輸入はコスト削減や国内調達のものと比べて高い性能や機能性のあるものを得られるメリットがあります。ですがその反面、価格を目的にするとメリットをデメリットが上回る可能性は高まります。多少の為替リスクや価格変動があったとしても価値が上回るものを選び、
実際にその家で暮らし、直に触れて体験してほしい
そんな妄想を描き続けられたことが今に繋がっているのかもしれません。というのも、対ドルで80円台に突入した頃、建築・住宅業界は輸入ブームとなったのに、僅か数年でほとんどの会社が輸入から撤退してしまったのです。このことからも目的が価格だったことが窺えるのではないでしょうか。
当社の場合、輸入できたのは元々パネル工場があったことが幸いしています。もし輸入だけを目的にしたなら・・・そのためだけの設備投資、人員配置が必要となりコストも嵩み、きっと数年も経たずに輸入を取り止めせざる負えなかったかもしれません。
追:この投稿は一昨日投稿の予定のもだったのですが・・ブログの形式が新しくなったようで戸惑い投稿できませんでした。まだよくわかっていない状況で、もし見難い場面があってもお許しいただけると嬉しいです。
親方の歴史を垣間見て改めて感服しました!
地方の工務店ですから物量は少量でも航路だけは開けてられただけで幸運でしたね(笑
親方様が挑戦し続け、築いたものを岩手で私達が今、享受できるのがいかに貴重か。尊敬の念に堪えません。
そんな大それたものではありません。いろんな運が折り重なっての結果なのだと今は思います。