2年ぶりに行って、行ってきました。
昨年は9月のつもりでいたのが、なぜか8月に終えたと聞いて、油断禁物だと反省。
岩手県一戸町奥中山、丘一面のひまわり畑。今朝の空は雲がかかっていたけど、8時以降文句なしの青空が広がり、斜面を埋めるひまわりがちょうど満開でした。そして丘の上には、いつもの白い家。うちが建てて、築15年になります。
今朝の畑の様子
天気と見頃の両にらみで日を選ぶのが、毎年のこの記事の恒例です。今年は今朝がその日でした。
車を降りた瞬間に、視界の下半分が黄色になります。手前のひまわりは背丈ほど。花はどれもお日様を向いて、斜面を上へ上へと続き、その上に白い家が乗る。何年通っても、最初の数秒は毎回言葉が出ないものです。
奥中山、今朝のひまわり🌻 pic.twitter.com/5Umg9XlvQL
— 親方|岩手の高断熱住宅 (@ooyakata11) September 17, 2026
なお、この畑は私有地です。見学の際は、住まわれているご家族のプライバシーと、地域の方の通行への配慮をお願いします。
この家と、このひまわり畑のはじまり
丘の上の家は、当社が手がけた「無暖房の家」シリーズで超高断熱住宅です。そして、それまでこのシリーズは木製サッシが主体だったのですが、初めて樹脂サッシを採用した家になります。
ウィンターガーデンを黒、母屋を白で仕上げた外観は、緑の季節にも雪の季節にも風景から浮きません。そしてデッキを挟んで、リビングとウィンターガーデンにフォールディングドアを誂えています。
奥中山は、盛岡から北へ車で1時間ほどの高原の集落です。夏は涼しく、空が広い。そのぶん冬は厳しく、マイナス20℃前後まで冷え込む土地です。設計のときに考えていたのは、この土地の冬を我慢の季節にしないこと。窓の外に広がる雪原を、暖かい室内から眺めて楽しむ家。夏はその同じ窓が、ひまわりの斜面を切り取ります。
そしてこのひまわり畑には、始まりの物語があります。畑がスタートしたのは、家が新築された翌年の2012年。地域を元気にする一助になればという、お施主様の思いから始まりました。以来、ご家族がその思いを受け継いで、毎年この斜面を黄色に染め続けています。数年前には駐車スペースも大きく拡張されました。見に来る人を迎え入れながら、近隣の通行に迷惑をかけない。畑の運営にも、住まい手の人柄が表れています。
築15年、同じ場所から可能な限り見たい
私がこの畑に毎年通う理由は、ひまわりだけではありません。
自分たちが建てた家を、15年間、毎年ほぼ同じ場所から、同じ季節に見続けられるって、ひまわりのおかげ。そして、施主さんたちのおかげですね。
これは工務店にとって、なかなか得がたい定点観測になっています。
新築の家はどれも美しい。問われるのは、10年後、15年後です。外壁の表情は保たれているか。家は暮らしに馴染んでいるか。風景の中で古びたのではなく、育ったと言える佇まいになっているか。
丘の上のあの家は、毎年この場所から見るたびに、答えを返してくれます。ひまわりに囲まれた白い外観は、築15年のいまも風景の主役です。
写真を年ごとに並べてみると、面白いことに、変わっていくのは畑のほうかもです。ひまわりの作付けの範囲、駐車場の広さ、周囲の木々の背丈。家は表情のまま、変わりゆく風景の基準点になっているかもしれません。家づくりの仕事は引き渡しで終わりではない、とよく言いますが、この畑に立つと、その言葉がそのまま目の前に突き付けられます。
風景を、窓にどう入れるか
この家から学んだことを、ひとつだけ書いておきます。
敷地に絶景があるとき、設計の仕事は「景色をどの窓から、どう入れるか」を決めることでした。リビングのフォールディングドア越しに、ウィンターガーデンのフォールディングドア越しに、ときにフォールディングドアを全開にし、デッキを挟んで季節ごとの丘を眺める。この家はそういう想定で設計されています。
夏のひまわり、秋の実り、冬の雪原、春の芽吹き。窓が同じでも、絵は一年中掛け替わります。豪華な内装をひとつ足すより、動く絵をひとつ窓に入れるほうが、暮らしは豊かになる。奥中山の丘は、毎年それを教えてくれています。
もっとも、マイナス20℃の土地で大きな窓を楽しむには、窓の性能という裏付けが要ります。眺めのための窓と、断熱のための窓を、両立させること。それがうちの仕事です。
絶景の土地に家を建てるとき、考えておきたいこと
この家の話を、これから土地を探す方へのヒントに翻訳しておきます。眺めの良い土地に建てるなら、考えておきたいことが3つあります。
1つ目は、景色の方角と暮らしの方角の整理です。眺望の向きと、日当たりの向きと、道路や隣家からの視線の向き。この3つは、たいてい一致しません。どの窓を景色に使い、どの窓を光に使い、どこを閉じるか。間取りの前に、窓の役割分担を決めるのが先です。
2つ目は、大きな窓を支える性能です。眺めの良い土地は、風の抜ける土地、冷え込む土地でもあります。窓を大きくした家が寒い家になってしまっては本末転倒だからです。ガラスとサッシの断熱性能、そして窓まわりの施工品質が、絶景の家の土台になります。
3つ目は、見られる側の設計。良い景色の場所には、人が来ます。この丘の家のように、風景の一部として眺められる立場になることもある。外から見られても暮らしが守られる窓の配置と、外観が風景に馴染む色の計画。景色を独り占めするのではなく、風景のよい一員になる。長く愛される家は、だいたいそちら側にいるのではないでしょうか。
見頃と、見に行く方へ
例年、見頃は9月の上旬~中旬前後です。昨年のように8月ということもありますが。天気の良い午前は光の向きが良く、ひまわりの顔がきれいにこちらを向きます。
写真を撮るなら、少ししゃがんで、手前の一輪にぐっと寄るのがおすすめかな。ローアングルで空を多めに入れると、花の黄色と空の青の対比が効いて、斜面の奥行きが出ます。今日の一枚も、そうやって撮っています。ただ、畑全体の狙うマニアな方は、2m以上ある三脚、脚立持参でいらしてますね。
繰り返しになりますが、畑は私有地で、丘の上の家は現役の住まいです。写真を撮る際は住まいのプライバシーに配慮を。車は所定のスペースへ。気持ちよく見せていただいている場所であることを、どうぞ忘れずに。
おわりに
家を建てた翌年に畑が生まれ、以来15回目の夏。家と畑と家族の時間が、ひとつの丘の上で一緒に積み重なってきました。
来年もまた、青空の日を選んで報告したいと思います。

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