今日は昔話から。
当社の現場では今、石膏ボードを縦に張っている。
30年ほど前、シアトルの現場で、「なぜ横に張らないのか」と逆に聞かれて、答えられなかった。そこから2年ほど、違いを調べたうえで、横張りに切り替えた。その横張りを、また縦に戻した。行ったり来たりに見えるかもしれない。でも、どちらにもちゃんと理由があった。
石膏ボードはなぜ横張りなのか?
1992年頃のこと。当時、シアトルの現場には年に4〜6回通っていた。
北米の2×4の現場では、壁の石膏ボードが横に張られている。日本の現場では縦が当たり前だったから、不思議に思って聞いてみた。
なぜ石膏ボードを横に張るのか
返ってきたのは、答えではなく質問だった。
「お前たちはどうしてるんだ?」から始まり、「なぜ縦に張るんだ? 天井も床の合板も、根太に直交させて張っているだろう。その基本を壁でもやっているだけだ」
言われてみれば、その通りだった。天井のボードは野縁や根太に直交させる。床合板も根太に直交。なのに壁だけは柱と同じ向きに張っている。うちのやり方を筋道立てて説明できなかった。これが北米型へ切り替えるきっかけとなった。
北米型の横張りで、現場は何が変わったのか?
1994年頃、最初の一棟を建てた。尺モジュールで描いた図面を、北米型に無理やり直しての着工だった。
ボードは4×8判(約1220×2440mm)。これを一人で天井に張るために、ボードリフターという道具を入れた。現場の職人からは反対された。「一人じゃ天井張れねえ」。それが、しばらくすると「慣れれば、こっちの方が楽だ」へと変わった。
アメリカでは、日本の大工がひとりでこなす仕事が5種類ほどの職種に分かれている。フレーマーが骨組みを建て、ドライウォーラーが壁と天井を仕上げ、そのあとで造作に入る。日本とは順番が逆で、仕上げを守る養生がいらない。横張りは、こうした仕事の組み立て方とセットで理にかなっていた。
なぜ今は縦張りに戻したのか?
きっかけは2012年頃、標準の仕上げを漆喰に切り替えたことだった。
漆喰に変えてから、ボードの中間ジョイントで割れが出ることが多くなった。横張りにすると、壁の中ほどを継ぎ目が横に一本走る。そこに線が出る。
ビニールクロスなら、下地の小さな動きはある程度クロスが受け止めてくれる。北米のドライウォールは、継ぎ目をテープとパテで処理して塗装で仕上げる前提の仕組みで、横ラインは目線にはいりにくい。ところが漆喰は、そのどちらとも違う。硬い塗り壁は、下地の継ぎ目のわずかな動きをヘアクラックというかたちで表に出しやすいらしい。
シアトルで教わった横張りが間違っていたわけではない。あれは、ドライウォールで仕上げる家の正解だった。仕上げが変われば、下地の正解も変わるのではないか。そう考えるようになった。
縦張りにすると、なぜ下地のコマが要らなくなるのか?
横張りの中間ジョイントを受けるには、柱と柱の間に横向きの下地材、いわゆるコマ材を入れる必要がある。継ぎ目の裏に何もないと、ボードの端が浮いてしまうからで。
縦に張れば、ボードの縦の継ぎ目は柱の上に来る。北米モジュールは、4×8判の幅が柱の間隔406mmでちょうど割り切れる寸法になっている。
継ぎ目がすべて柱に乗るので、中間のコマ材が不要になる。割れやすい横の継ぎ目がなくなり、下地の手間もひとつ減る。そのうえ、横のひび割れはなくなった。4×8判はそのまま使い続けているから、北米型に切り替えて得たものは手放したわけではない。
石膏ボードの張り方は、どう決めればいいのか?
私たちは、仕上げ材から逆算して下地を決めている。
ドライウォール(テープ+パテ+塗装)は、横張りが理にかなう
ビニールクロスは、横張りでも縦張りでも納めやすい
漆喰などの塗り壁は、継ぎ目を柱に乗せられる縦張りのほうがよい
家を建てる側から見ると、石膏ボードの向きは完成後に見えない部分。ただ、塗り壁を考えるなら、家をつくるうえで、仕上げと下地をどうつなぐかを考える必要があったことになる。
よくある質問
Q. 北米の2×4住宅では石膏ボードは横張りが標準?
A. 私たちがシアトルで見た現場では横張りだった。天井や床の合板と同じく、下地に直交させて張るという考え方による。
Q. 漆喰仕上げの壁に割れが出やすいのはどこ?
A. うちの経験では、横張りにしたボードの中間ジョイント部分で割れが出ることが多かった。
Q. 縦張りにするメリットは?
A. 4×8板を使うので、縦ジョイントも2/3になる。縦の継ぎ目が柱の上に来るので、中間の下地(コマ)が不要になる。漆喰で割れやすい横の継ぎ目もなくなる。
盛岡・滝沢で、漆喰の家を建てようになってから、20年ほどになる。継ぎ目の位置ひとつにも、これまでの失敗と判断が入っている。



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