おいしい目撃者たち

のどかな田舎村。
晴天の秋空をあおぎながらのんびりと歩く。
そんな静寂を破るように後方より叫び声が!?

○チョッ! ○チョォーッ!!

もすかすて・・・オレのこと呼んでる?
(ガチョウじゃないよなあ・・・)
振り返ると声の主は顔なじみのアサばあちゃんだ。
息を切らしながらこちらに向かってくる。
気持ち勢いはあるが、足が追いつかないから前傾姿勢。
まあ、元気はいいがさすがに70歳代。
走っているようにもみえるがスピードはあひるにも及ばない。
その姿にいたたまれずこちらからも歩み寄った。
そすたら・・・

「○長さま!○長さまぁ!」ときた。

・・・さま!?ときた。(なんか今日はおがすぐねえが?)
呼び方がワンランク上がってるべ。
「さま」付けだなんて初めてことだ。

どうすた?と声をかけた。

今朝な、くず(9時)すぎな、パーン!とおっきなおどがすたのさ。

おらさ、そのおどでびっくりすたじゃあ。

何あったべどおもって、そどさででみだども
周りでぁ何にもねさそな感ずだったのさ。

なのでふすぎだなぁど思ってさ。
そすたらさ、あどでカーテンあげでみだらばさ、たまげだじゃ。

大変なごどおぎですまってでさあ・・・

真剣な表情で言いきったアサばあちゃん。
よくはわからんが、いずれ事件が起きたらしい。
その場からアサばあちゃんに促されるまま事件現場へ。

そこで見たものは。。。

被害状況

飛び散るガラスの破片。
まさしく容易ならざる事件のようだ。

気分はデカ長よろしく、空かさず本部に応援を要請。
現場検証を行った。

すると犯行に使われたと思われる凶器らしきものを破片の中に発見。
念入りな検証の結果、これを凶器と断定。

現場検証

正に飛び道具。

周辺調査、被害者からの聞き取り等の結果、
怨恨の線は薄く、偶然がもたらした飛び石と断定。

犯人を特定することを断念、捜査は打ち切りとなった。

ところが、
終わったかに観えたこの事件は急展開を見せようとする。
犯人が自首してきたのだ。それも我が特捜スタッフが。

「ボクです」

 ?何が?

「ガラス割ったのボクです」

 はあっ!? お前が?

「きっと、ボクが草刈りしてる時に石が飛んだんだと思います。すいません!!」

 ちょっと待て、お前が草刈していたのは8時半過ぎまでだよな。

「はい。。」

 事件発生時刻は9時半だぞ。

「いえ、ボクだと思います」

と余りに言うので、凶器を見せた。

「えっ、こんなに大きいんですか?・・・
 こんな大きな石ははじけません。考えたらこんな石
 20メートル以上なんて飛ばせません。せいぜい2,3メートルです・・・」

 そうだよ。草刈現場と被害現場の距離、角度からしても、
 且つ、時刻からもどうみたって無理だべ。

ということで、
自白してくれたものの不起訴処分に。
そして事件は再び振り出し、迷宮入りに。

被害はありがたいことにガラスの破損のみ。
現場はわが所轄のため、ガラスは我が方で交換してあげることにした。

喜んだアサばあちゃん、

「もっしゃげねな。
 もうすぐな、これがうんまぐなるがらさ。
 そすたら、ちゃーんとおいすぐこっしゃえでごつそおすっがらな」

目撃者たち

と、目の前のツル?を指差した。

「うんまそうだべ。」

 ・・・何?

うまそ・・・

よく観ると、それはそれは見事に実ったキウイ。

このキウイだけが唯一の目撃者だったのだろうか。

もう事件は終わったのだ。

キウイご馳走になれんの楽しみにしてっから。
来年も岩手山にも登って、いつまでも元気でいでけで。

心の中でつぶやき、デカ長よろしく現場を後にしたのだった。

 (エンディングはもちろん、「特別機動捜査隊」)

                        ー大共おやじの事件簿ーより^^;

4 件のコメント

  • 面白すぎます。
    副業で本書きなんぞいかがでしょう。
    笑いながら読んでいたのを、家内が「何?なに?」
    と言うもので、朗読しちゃいました。
    このブログのおかげ?で岩手訛りも上手に。
    それにしても立派なキウイですね。
    岩手でも実がなるんですね。びっくり。

  • アルボンさん、今の岩手県人はそんな訛ってませんからね。
    ここの訛りは標準だと思わないで下さい^^;
    爺ちゃん婆ちゃんとコミュニケーションとれるくらい、かな。
    訛っている職人さんが多い建築現場は今後訛りの「聖地」化
    するんじゃないでしょうか。
    キウイが滝沢村特産になる日も遠くないのかも。。

  • いいね~
    この訛った文章がながなが かげねんだ~
    日夜努力しております。
    おら~ わっせでしまったのがな~?
    おらもここで勉強させでもらうがら
    よろすぐ

  • 神奈川の親方さん、訛りなどの勉強しなくても(汗)
    岩手の現場では訛れないと職人さんと話も通じなくて
    ついて行けませんからね^^;

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