岩手の高断熱住宅に欠かせない、窓のヒートブリッジ対策

住宅への断熱材採用初期

40年程前、岩手の住宅にグラスウール断熱材が壁に5~10㎝入るようになった。

にもかかわらず、暮らしの中で断熱による暖かさの恩恵は与れなかった、のはなぜか。
それは、きちっと断熱材が壁全体に充填しておらず隙だらけだったことに加え、隙間風だらけの住宅のままだったからだ。

この当時の住宅にある隙間の自然換気による暖房の熱損失は、住宅全体の熱損失量の50%を超える。

当時大きな問題となったのが、壁体内結露による住宅の構造内部の腐れ。
 →この解決策として、外壁通気工法と合わせて通気工法用シージングボードが登場したのだ。

住宅の気密化

ここから住宅の隙間を無くすべく高気密化が提唱され、壁内部室内側に壁への湿気の侵入を防ぐ目的も併せ持つ気密シート施工が登場した。気密シート継ぎ目のテーピングや気密コンセントボックス、そして防湿層の連続性を確保するための先張りシート施工などが気密性向上のポイントとなった。
結果、C値は1以下になり、外張り断熱に移行するとC値は0.2~0.6になった。

こうなってくると、次に住宅の熱損失割合が大きいものとして窓が浮上。
住宅の隙間を無くし隙間はゼロと言って良いレベルになってくると、住宅全体の中で窓の熱損失割合は50%前後になる。

同時に、隙間風で逃げていた湿気の行き場は窓に集中し、窓の結露量は増大するようになった。

岩手の住宅の窓枠はアルミやアルミ複合から樹脂へと移行し、開閉方式も引き違い窓から縦辷り窓が主流となった。
長くなるのでここでは詳しく説明しないけれど、計画換気と全館暖房の重要性を再認識する流れと合わせて、サッシの高断熱化を目指し当社では独自にトリプルガラスサッシを北米から輸入するようになった。

そう、あれからもうかれこれ20数年、

外張り断熱から複層(2層3層)断熱構造へ

そして、省エネの考え方は太陽光発電ありきだったのが、震災がきっかけとなり住宅業界は太陽光発電の前に優先すべきは節電できる住宅へと意識は変化した。

それと同時に国産サッシのトリプルガラス化への流れもあり、住宅業界全体で更なる高断熱化への意識は高まったように思う。

20年以上前ならトリプルガラスの高断熱サッシは輸入に頼っていて特別なものだったのに、ここ数年、当社でもトリプルガラスサッシは当たり前になった。それでも高断熱化された住宅の中で一番弱い部分は結局サッシのままなのだ。

もっと良くするためには・・・ 

より断熱性能の高いサッシが欲しい!

ヨーロッパの高断熱サッシを輸入へ

サッシを一つの商品として選ぶのではなく、サッシをパーツごとに分けてそれぞれを選択し組み合わせることで性能を上げられることをヨーロッパが教えてくれた。

サッシ枠の断熱性能 Uf値
サッシ枠の性能値はいくらか、
どういう枠構造か、中空層やガスケットは・・・どの構造が理想か。

ガラスの断熱性能 Ug値 
ガラス枚数だけが性能ではなかった。Low-Eガラスにある性能の違い ガラス間のガス層の種類と厚みによって異なる断熱性能。

ガラススペーサーの断熱性能 Ψg値 
これは日本で殆ど語られることはないサッシの断熱性能要素。12㎜のペアガラスまでなら気にならなかったかもしれないが、トリプルガラスのように、より断熱性能の高いものをヨーロッパに要望して初めてガラススペーサーが性能に大きな役割を持つことを知ることになった。

ガラススペーサーの断熱性能を見ながら選ぶことができるなんて、サッシをヨーロッパから輸入することがなかったら未だに知らないままでいたかもしれない。

サッシの断熱性能を決めるこの三つの要素を選択し組み合わせを変え、断熱シュミレーションを繰り返し、岩手の住宅にならどの組み合わせが理想かを考え絞り込んだ。ヨーロッパから本格的にサッシを輸入し始めて13年、

お住まい中の冬の断熱調査から、違和感を抱き始めたのは8年前。

 なぜ、こうなる?

 なぜ、ここがこういう風に温度が下がる?

 何か施工に問題があったのではないか?

と不安になり、いくつもの家を確認してみていると何となくわかってきた。
それは断熱性能の高いサッシフレーム(Uf値が高い)を使った住宅だから見える視界であって、
断熱性能の低いサッシフレームでは視認しにくいのだということを。

違和感を感じてから2年、その原因がサッシの取付部、サッシと躯体との間にある性能でΨinstall値という断熱性能による影響だということをヨーロッパの情報から知ることになった。
と、ここまではいい。

窓のヒートブリッジ対策へ

サッシ取付部の熱損失部分を防げば窓の断熱性能は上がるらしいことは、ヨーロッパのネット情報で知ることはできる。けど、果たしてどうすればどのくらい断熱性能の数値を改善できるのか・・・その目安となるものは見つけられなかった。

でもさ、どのくらい良くなるかは数値ではわからないにしても、窓の実性能を向上できるならと検討を重ね、5年程前から無暖房の家シリーズにサッシの取付性能Ψinstall向上スペックの採用をスタートした。

  高断熱サッシの性能を損なわないための、窓の施工法

でもまだこの時点でも、一部でも実性能がよくなるのだからと前向きではあれ、危機感と言えるものはなかったような気がする。その熱損失がどの程度の違いものなのかが曖昧だったからなのかもしれない。そのモヤモヤした曖昧さもこの一年前の年末年始の測定作業から

 こんなに違うんだ!?

という危機感へと変わった。

測定データから高断熱サッシの性能がサッシ取り付け後のヒートブリッジの影響で窓性能がどれだけ下がるのかが概ねわかってきた頃、

  サッシの断熱性能Uwより、窓の取り付け後断熱性能Uwinstalledが重要

社内でもこのことを共有し、お客様にも伝えるようにした。

ところが、スタッフからの話では、

 お客様に説明しても伝わってないようですし、
 お客様は数字で言ってもピンときてませんよ。と。

そ、そうなんだあ・・

 もっと触れたりして直感的にわかるものって、ないっスかねえ。

・・・確かに、
岩手の住宅には高気密も高断熱も必要だということは、殆どの住宅メーカーでも話してるだろうから10人中8人位の人は知っているだろうし、トリプルガラスで断熱性能値の高い高断熱サッシの方が住宅は暖かいだろうことは誰でも想像はつくだろう。

だけど、100人中100人が誰も話さない、聴くこともない、

サッシの取り付け方で大きく異なってしまう窓性能のことを、

一人が叫んだところで・・・誰にも届く筈はないか。。

昔、日本にLow-Eガラスのない当時、
輸入サッシのLow-Eガラスの断熱性能値を口で話しても伝わらなかったのと同じだな。
そうだよな、なんか直感的にわかるものが必要なんだべなあ、、

そんなことから考え作成してみたのが、窓のヒートブリッジ対策を比較できるおもちゃ。

岩手で高断熱窓のヒートブリッジ対策比較
これは正月休みの時にチェックした際のサーモ画像。

四角いのが窓。一番内側の四角い部分がトリプルガラスで上も下もサッシの断熱性能はほぼ同等で、上の窓がヒートブリッジ対策済みの窓で下が通常の取り付け方法で対策無しの窓。
この画像範囲内の温度差は約20℃。
右側のカラー表示バーで概ねの温度を推し量って頂ければいいかと。

但し、ここまで温度差が生じてしまうのには窓サイズが影響している。
いずれサイズが小さくなったことでより性能差が分かりやすくなった、とも言えるのだけど。

サッシサイズに対する窓ヒートブリッジの影響について知りたい方は以下をチェック。

  計算されない高断熱サッシ&窓の盲点

岩手の住宅をもっと高断熱化するためにはサッシの更なる高断熱化は必要。
されど、ヒートブリッジ対策が施されないままの窓なら、その窓の断熱性能は半減する。

さあ、

岩手の高断熱住宅のレベルを進化させるために、

サッシの高断熱化の前に、施工による窓の高断熱化を進めないといけない。

まずは、

窓のこと、伝える、伝わることからかな。

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