漆喰外壁の家に住んで分かった本当のメリット|費用・手入れ・耐久性を実証

漆喰仕上げのモデルハウス外観の画像

漆喰仕上げのモデルハウス外観の画像

先日、友人である工務店の社長さんと話す機会がありました。その時、外壁の流行りの変化についての話になり、「ここ数年流行りまくった○○〇も□□□もこちらではまったく見なくなっていますよ。逆に板張りと増えてますね」と。どこでも目にするようになると、次期に避けられるようになる。のは業界がこれまで繰り返してきた歴史でもあります。

そのような中で最近、自然素材への関心の高まりとともに、住宅の外壁に木材や漆喰を採用するケースが増加しています。しかし、当社で標準的に採用している漆喰仕上げですが、「自然素材である漆喰外壁は本当に良いの?」「メンテナンスが大変そう」といった疑問を持つ方も多いのも事実です。今日は、岩手県で20年以上にわたり漆喰外壁の住宅を手がけてきた当社として、漆喰外壁の本当のところをこれまで断片的だった過去記事のまとめとしてすべてお伝えしようと思います。

  1. 漆喰外壁とは:その特徴と魅力
  2. 漆喰外壁を選ぶべき理由:従来外壁材の問題点
  3. スペイン漆喰の優位性と製造工程
  4. 漆喰外壁のメリット・デメリット
  5. 漆喰外壁のメンテナンス方法
  6. 費用対効果の検証
  7. よくある質問と回答
  8. まとめ

1. 漆喰外壁とは:その特徴と魅力

漆喰外壁とは、消石灰を主成分とした自然素材の外壁仕上げ材です。日本では城壁や蔵などの伝統建築に使われてきた歴史があり、現代住宅においても健康性と美観性を兼ね備えた優れた外壁材として注目されています。

漆喰の基本構成

消石灰と大理石の原材料の画像

  • 消石灰:石灰石を1000℃以上で焼成し、水と反応させて作られる
  • 大理石粉:(ヨーロッパ産漆喰の場合)つなぎ材として使用
  • 天然顔料:色付けに使用される自然由来の着色料

漆喰の独特な性質

漆喰の最も興味深い特性は、時間の経過とともに石に戻る「石灰化現象」です。塗られた漆喰は、空気中の二酸化炭素と反応しながら数十年をかけて元の石灰石へと変化していきます。これにより、時間とともに強度が増し、独特の風合いを醸し出します。

2. 漆喰外壁を選ぶべき理由:従来外壁材の問題点

現代外壁材の致命的な問題

当社が漆喰外壁を標準採用するきっかけとなったのは、ある築9年の住宅で起きた事件でした。外壁のコーキング劣化により外壁材が雨水を吸い込みボロボロとなったことで、外壁材の一部を交換する必要が生じました。しかし、メーカーに同じ外壁材を注文したところ、驚くべき回答が返ってきました。

「ご依頼の品番はすでに廃番となっており、注文に応じることはできません」

築わずか9年で廃番。これが現代の建材業界の現実だったのです。

外壁材廃番の構造的問題

毎年新しくなる外壁材のカタログ。カタログ内の目につきやすい場所に新製品が紹介されているはずです。当然、新商品であるということは前年以前に新築された家では採用されていないことが想像できるので、心理的には新しい品番を選択したくなるのではないでしょうか。これはこれから家を新しく建てようとする方にとって当たり前の心理です。

ところがです。自分が選択した外壁品番が数年後、カタログの生産中止品リストに載っていたとしたらどうでしょうか。この矛盾に気付いたことが大きなきっかけとなったのです。

新製品あれば生産中止もある外壁カタログの画像

  • 毎年新しいデザイン・柄が登場
  • 新商品と同数の既存商品が廃番
  • メンテナンス用の在庫も一切保管されない
  • 採用翌年に廃番となるリスク

この問題を解決するため、私は欧米のように時間が経っても変わらない品質の外壁材として、漆喰外壁の採用を決断いたしました。

3. スペイン漆喰の優位性と製造工程

日本の漆喰とスペイン漆喰の違い

項目 日本の漆喰 スペイン漆喰
つなぎ材 糊、スサ(有機物) 大理石粉(無機物)
耐久性 有機物による劣化あり 無機物のため高耐久
施工性 技術に左右される 比較的施工しやすい
色彩 限定的 豊富な色展開

スペイン漆喰の製造工程

石灰岩砕石現場の画像

スペインの石灰岩原石の画像

大きなサイズと小さなサイズの石灰石に分けられます。

Step 1: 石灰石の採掘と焼成

山から採掘された石灰石を、伝統的な焼成炉で1000℃以上の高温で焼きます。この工程は千年以上続く伝統技術です。

スペインの伝統的は焼成炉窯出し口の画像

上から投入された石灰石は下から順に積み重ねられてゆきます。

スペインの伝統的な焼成炉の壁面の画像

スペインの伝統的な焼成炉上部投入口の画像

窯上部投入口。

Step 2: 生石灰から消石灰への変化

焼成された生石灰に水を作用させると、化学反応により100℃を超える高温が発生し、石が粉末状の消石灰に変化します。

消石灰と水の反応実験2の画像

消石灰に水をかけた瞬間

消石灰と水の反応実験3の画像

水と反応した消石灰が粉々に変化した様子。

反応して消石灰が変化する様子の動画。

 

Step 3: 大理石の粉砕と混合

スペインの大理石採掘場の画像

骨材となる大理石採掘場

採掘された大理石の画像

採掘された大理石

近くで見た大理石の石肌面の画像

白色系のこれらの大理石(ビアンコカララ類似)を段階的に粉砕し、最終的に粉末状にします。この大理石粉を消石灰に混合することで、強度と施工性を兼ね備えた漆喰が完成します。

大理石粉砕工程の画像

大理石はこのように段階的に必要な各サイズに粉砕されるのです。

4. 漆喰外壁のメリット・デメリット

メリット

1. 優れた耐久性

  • 廃番リスクゼロ:自然素材のため製造中止がない
  • 経年強化:時間とともに石灰化が進み強度が向上
  • 部分補修可能:ひび割れなどは同材料で簡単補修

2. 健康・環境面の利点

  • 調湿効果:湿度調整により快適な室内環境を維持
  • 抗菌・消臭効果:消石灰の強アルカリ性による天然の抗菌作用
  • 化学物質フリー:VOC等の化学物質を一切含まない

3. 美観・デザイン性

  • 豊富な色彩:天然顔料による自然な色合い
  • 経年美化:時間とともに風合いが向上
  • 手作り感のある質感:工業製品にはない温かみ

4. メンテナンス性

  • 簡単なクリーニング:専用洗浄剤を塗るだけ
  • 足場不要:伸縮バーで2階部分も作業可能
  • DIY可能:専門技術不要で施主自身でメンテナンス可能

デメリット

1. 初期コストの考慮点

  • 工業製品の外壁材と比較すると材料費は若干高め
  • 施工技術により仕上がりに差が生じる可能性

2. メンテナンス頻度

  • 7-10年に一度のクリーニングが推奨
  • 白色の場合、汚れが目立ちやすい

3. 気候条件の影響

  • 雨が当たりやすい部分は黒ずみが発生しやすい
  • 立地や風向きによって汚れ方に差がある

5. 漆喰外壁のメンテナンス方法

基本のクリーニング手順

メンテナンス作業の様子の画像

必要な道具

  • 専用洗浄剤(アルカリ系)
  • 伸縮バー(1m、2m、6m)
  • ローラー
  • ブラシ(頑固な汚れの場合)

作業手順

  1. 洗浄剤の塗布:下から上に向かってローラーで塗布
  2. 浸透待ち:洗浄剤を外壁に浸透させる
  3. 必要に応じてブラッシング:築10年超の場合は2度塗り推奨

外壁クリーニング前の画像

外壁クリーニング後の画像

汚れの発生パターンと対策

汚れが発生しやすい箇所

  • 軒のない外壁面
  • ベランダ手すり壁
  • 防火シャッターボックス周辺
  • 雨が直接当たる部分汚れやすいシャッターBOX上外壁クリーニング前の画像汚れやすいシャッターBOX上外壁クリーニング後の画像

効果的な対策

  • 築7-8年での初回クリーニング:浅い汚れは1回の塗布で除去可能
  • 10年超の場合:2度塗りまたはブラッシングが必要
  • 原液濃度の調整:汚れの程度に応じて洗浄剤を希釈

セルフメンテナンスの実際

DIYメンテナンスの作業風景1の画像

DIYメンテナンスの作業風景2の画像 DIYメンテナンスの作業風景3の画像

当社のお客様の多くが、休日を利用してセルフメンテナンスを行っています。「足場をかけずに自分のペースで作業できる」「汚れの気になる部分だけできる」「期限に追われない」といった声をいただいており、漆喰外壁の大きなメリットとなっています。

6. 費用対効果の検証

メンテナンス費用の比較

漆喰外壁の場合

  • セルフメンテナンス:材料費2万円/10年
  • 業者依頼:数万円/10年(足場不要のため安価)
  • 60年間の総費用:12万円(セルフの場合)

一般的な外壁材の場合

  • 外壁塗装:100-200万円/15-20年
  • 外壁張替え:200-400万円/30-40年
  • 60年間の総費用:400-800万円

長期的な経済効果

漆喰v.s一般外壁メンテナンス費用比較の画像

漆喰外壁は初期コストこそ一般外壁材と同程度ですが、長期的なメンテナンス費用を考慮すると、圧倒的にコストパフォーマンスに優れています。

7. 実際の施工事例とお客様の声

築10年住宅のメンテナンス事例

築10年住宅の外壁クリーニング前の画像

築10年住宅の外壁クリーニング後の画像

盛岡市内の築10年を超える高断熱住宅では、2階部分と1階の白い部分に黒ずみが発生していました。施主様のご要望により外壁クリーニングを実施した結果、新築時のような白さを取り戻しました。

お客様からの評価

  • 「想像以上に簡単にきれいになった」
  • 「足場代がかからないのが嬉しい」
  • 「自分でメンテナンスできるという安心感がある」

8. よくある質問と回答

Q1. 漆喰外壁は地震に強いですか?

A1. はい。漆喰下地に強力なグラスファイバーが伏せ込まれていること。そして漆喰は乾燥とともに石灰化が進み、時間とともに強度が増します。また、ひび割れが生じても構造に影響はなく、同材料での補修が可能です。

Q2. 色あせや変色は起こりませんか?

A2. 天然顔料を使用しているため、化学塗料のような急激な色あせはありません。むしろ時間とともに深みのある色合いに変化し、経年美を楽しめます。

Q3. 寒冷地での使用に問題はありませんか?

A3. 岩手県での20年以上の実績があり、寒冷地での使用に問題はありません。凍害に対しても優れた耐性を示しています。

Q4. 他の外壁材からの変更は可能ですか?

A4. 既存外壁の撤去後、適切な下地処理を行えば漆喰外壁への変更は可能です。断熱リフォームと合わせて行うケースが多くあります。

Q5. メンテナンスを怠るとどうなりますか?

A5. 外観上の汚れが目立つようになりますが、外壁材自体の劣化は起こりません。漆喰は石ですので、汚れても構造的な問題は発生しません。

9. 漆喰外壁の将来性と持続可能性

環境負荷の軽減

漆喰外壁は製造時のCO2排出量が少なく、廃棄時も自然に還ることから、環境負荷の軽減に貢献します。SDGsの観点からも、持続可能な建材として注目されています。

技術継承と発展

当社で施工している職人は30代です。漆喰の歴史の古くは9000年以上続く伝統技術でありながら、現代の住宅性能に適合する施工方法の開発により、より多くの住宅への普及が期待されます。

10. まとめ:漆喰外壁で実現する理想の住まい

美しい漆喰外壁の住宅全景の画像

漆喰外壁は、単なる外装材を超えた価値を提供します。現代の使い捨て建材とは一線を画し、時間とともに美しさを増し、住む人の健康を守り、地球環境にも配慮した理想的な外壁材なのかもしれません。

漆喰外壁を選ぶべき理由(まとめ)

  1. 経済性:長期的な視点で圧倒的なコストパフォーマンス
  2. 健康性:化学物質フリーで家族の健康を守る
  3. 美観性:時間とともに深まる自然な美しさ
  4. 環境性:持続可能な自然素材
  5. メンテナンス性:簡単で経済的な維持管理

最後に:住宅への愛着を育む外壁材

ヨーロッパの人々が何世紀にもわたって家に手をかけ続けるように、漆喰外壁は住む人と家との深いつながりを生み出します。定期的なメンテナンスを通じて家への愛着が深まり、次世代に引き継げる本物の住まいを実現できる筈です。

現代の住宅において、本当に価値ある選択とは何でしょうか。なぜ欧米の住宅寿命は100年は当たり前と考えるのでしょうか。短期間で劣化し、メンテナンス部材も入手困難になる工業製品を選ぶのか、それとも時間とともに美しさと強度を増し、簡単なメンテナンスで何十年も美観を保てる自然素材を選ぶのか。

日本ではまだまだ一般的ではないかもしれませんが、
あなたの理想の住まいづくりに、漆喰外壁という選択肢をぜひご検討してみてください。