スウェーデンの家に学ぶ、日本との違いとその魅力

岩手に暮らす人なら寒い冬が訪れるたびに、

 来年こそは暖かくて快適な家にしよう!

と決意する人も多いのではないでしょうか。

なのに、寒い冬を越し春が訪れると寒さの苦痛も決意も和らいでしまうといつの間にか一年過ぎてしまっていて次の冬を迎えてしまう。

 また、何もしないまま辛い冬を迎えてしまったよお・・

 てなこと繰り返してるうちに歳もとってしまってさあ(笑

というような話は家の建て替えを計画している方からよく耳にする話です。

岩手の、特に年配の方には、

 冬だもの、寒くて当たり前だべ!

と、寒い家が当たり前で暖かい暮らしは贅沢であるかのように感じている方もまだいらっしゃるようで、寒い家は人権侵害だと考える北欧の人たちとはなんと大きな開きがあるのだろう、と不思議に思います。

例えば、北欧スウェーデンの家は、日本とは違い高い断熱技術を備え、寒冷地での暮らしを支える工夫が詰まっています。今日は2006年に視界に入った美しいスウェーデンの住宅を例に、ほぼ20年前に既にあった特徴や私が感じた日本との違いについて当時を思い出しながらお伝えしてみようと思います。

スウェーデンの家の特徴って

個人的には、スウェーデンに限らず北欧の家のイメージは大屋根スタイルの外観、もしくは平屋の切妻屋根という感じでしょうか。そしてトリプルガラスの回転窓が最も印象にあったかもしれません。

スウェーデンの家の画像

高い断熱性能

スウェーデンの住宅は厳しい冬の寒さに対応するため、家の断熱性能は非常に高い。壁や屋根、床に厚くしっかりと断熱材を施工しているため、室内は少ない暖房エネルギーで暖かさを保てるのです。20年前でも既に窓にトリプルガラスが一般的で施工面でも熱損失を最小限に抑える工夫がされていたのです。

それが、下の動画でサッシ周囲に巻き込んでいるテープです。

このテープを最初に観たのはスウェーデンの工事現場でした。のちに、ドイツのサッシ工場で勧められて繋がったものです。その機構上、防水性、耐紫外線、膨張性能、断熱性も優れているという代物でした。

20年前には既に3層断熱だったスウェーデンの断熱

スウェーデンの3層断熱の画像

写真にあるように、グラスウールで3層になっているのがわかります。そのうえ、よく観ていただくと気づくかと思いますが、断熱材の色味が違いますよね。これは断熱材の密度を変えた組み合わせにすることで断熱性を向上させ、且つ断熱材の垂れ下がりを防ぎ断熱性能を維持するしくみとして考えられているようです。

グラスウールだけじゃないEPS断熱材で40㎝超の壁厚も

スウェーデンの家の断熱と壁厚の画像

当時、築40年以内での家の解体は禁じられていたスウェーデンでは年間の新築着工数は8000戸程ではなかったかと。だから新築工事現場に出くわすなんて軌跡に等しいと言われたのですが、幸運にも工事途中だったスウェーデンの家の壁の写真です。この壁厚を観たら私たちの断熱はお子様レベルだと恥ずかしくなったものです。

当時の日本では壁厚の10㎝程の充填断熱、付加断熱と言われる外張り断熱と合わせても寒冷地では2層断熱が精一杯だったと思います。冬になると「隙間風が寒い」という声を耳にしますが、スウェーデンの家では古い家でもそんなことはほとんどありません。一度室温を上げれば、その暖かさが長時間保たれる断熱構造なのです。

20年前にはトリプルガラスだったスウェーデンの家

スウェーデンの家のトリプルガラスの画像

私たちの日本から比べたら、トリプルガラスだけでも凄いのに、手前のガラススペーサーはアルミなのにその隣りのガラススペーサーは質感からして断熱性能の高いガラススペーサーとの組み合わせです。恥ずかしい話、20年前当時の私の知識レベルではこの凄さに気付けていなかったのです。良いものが視界に入っているにも関わらず・・気付けないなんて何とも勿体ない話ですよね(笑

自然素材を活用した設計

スウェーデンの家では木材が主役。写真の家も木の外壁で覆われています。この木材は地元で採れるものが使われ、外壁通気層を有し湿気を調整する機能も持っています。さらに、外壁の塗装には自然に溶け込む色合いであるアースカラーが多く選ばれ、景観との調和が図られていますね。

遊びごころと機能性もあるスウェーデンデザインの家

スウェーデンの家って画一的でデザイン傾向の似通った家が多い印象でしたが、それは大雑把な見方かもしれないと思った家があります。下の青みがかったこの家の色も、まるで雪景色に溶け込むような美しさを感じさせます。

スウェーデンの家にある遊び心の画像

同系色で色分けする柱型とトリム

最初に紹介した写真もそうですが、色分けする場合で一番多いパターンではないかと。

デザインポイントとして格子も含めた窓デザインも凄い!

真ん中建枠よりほんの少し細めの横框を縦サイズの真ん中に置かず上部ガラスが正方形になる高さに配置しています。そのような形の窓を家全体に配置することで外観に統一感を持たせています。そして左奥の窓ガラスを観てください。上の正方形の窓ガラスにだけ十字で格子を入れているのですから、さすがだなって今だから気付けます。でも当時はそんな観方はできないかったですね、未熟過ぎましたから(笑

家の外観デザインに遊びごころを

よく観て下さいね、というかズームしてみますね。

スウェーデンの家にある遊び心と耐久性への拘りの画像

赤丸で囲った部分があるだけで、この家の前を道行く人たちにふっと笑顔がこぼれる
そんなやさしさを感じてしまうのは私だけでしょうか。

雨仕舞を重視した窓トリム上部の水切り施工

日本の住宅とは違い。サッシが内付けで窓面が外壁面より奥まった位置に取り付けられるのは北欧に限らずヨーロッパでは当たり前。これが家の表情をやさしく見せるポイントであると後から気付かされるのですが、それは現在の当社の窓と同じで当社も窓下には水切りが付いています。こちらの家で凄いのは黄色の〇で囲んだ部分で、窓トリムの上にも水繰りが取り付けられていることです。

日本の家なら窓トリムを回してコーキング処理して終わりです。このスウェーデンの家は、雨仕舞の構成として正しい!欧米でたくさんの家を観ていると、このように方法は違えど雨を切るしくみを見かけるようになりました。見かけるようになったというのは変ですね、気付けるようになったというのが正しいかな。

冬の陽射しを最大限活用する窓

大きな窓が多いのは、日照時間が短い冬に光をできるだけ取り入れるためです。また、屋根の傾斜が急なのは雪が溜まりにくい構造を意識した結果だと思います。さらに、窓の枠やドアに施された繊細な装飾等から実用性を損なわない範囲でデザインを楽しむ気持ちが感じられるのではないでしょうか。

北欧と日本との家の違い

断熱への意識

日本の住宅では、暖房で暖める意識はあっても断熱への意識が低くつい見過ごされがちです。特に古い家屋では、断熱材がほとんど使用されていない場合だってあり、冬は暖房をつけてもすぐに冷えてしまうことが多いのではないでしょうか。一方でスウェーデンでは、住まいの断熱性能は生命を守るための必須条件とされておいますから、設計段階から徹底的に対策が施されています。

冬のエネルギー効率

日本ではエアコンやストーブで暖を取るのが一般的ですが、スウェーデンの家は全館暖房システムが主流です。これは家全体を均一に暖める仕組みで、断熱性の高さと相まって非常に効率的だからです。光熱費が抑えられるだけでなく、部屋ごとの温度差が少なくなるため、快適さが格段に向上するのです。

日本が学ぶべきポイント

スウェーデンだけじゃないですが、これだけの断熱性や耐久性への配慮のみならず、小粋なデザインや遊びごころも持ち合わせているのが北欧スウェーデンの家です。

断熱性能の向上

住宅の断熱性能を高めることは、快適な住環境を作るだけでなく、エネルギー効率を向上させるためにも重要だと意識することが大事でないかと。スウェーデンの家のように窓や壁、床などに断熱材をあしっかり取り入れるだけで、冬の暖房費が大幅に減る可能性が生まれるのですから。

家のデザインと機能の両立

見た目の美しさと機能性の両方を兼ね備えた設計が、スウェーデンの住宅の魅力です。日本でも見た目の外観デザインだけでなく、日常生活の快適さを考慮した設計が求められると感じます。

自然素材の活用

自然素材を活用した家づくりは、環境負荷の低減だけでなく、快適さを向上させます。木材の暖かみは、居住者の心も和らげる効果がありますからね。

欧米の住宅を観てきて感じること

20年前のスウェーデンの住宅に限らず、欧米の住宅を観て日本にはないのに、なぜ? 
日本では、作りても住まい手もそこまで断熱を必要ないとする意識レベルなのになぜ欧米はここまで凄いのか?
なぜ九州で新築した家の暖房費が4万円もかかるのに普通だと考えられるのか?

ずっと疑問に思い続けてきました。

快適性を向上させるはずなのに、同じものが日本にない!
日本に無いなら輸入したい。

北欧やドイツで実現できてるなら、日本でも実現したい!
日本に無いならつくるしかない。

との想いで、日本の人たちに知って欲しい、体感・体験してほしいことは山ほどあるのに、
私たちに今できてることは、まだほんの少しでしかありません。

先ずは、世界にはあることを知ってもらうしかありません。
自分の知らない領域に出会った時、最初はそこまでは必要ない!と思うかもしれません。
でもそれを否定することなく、

 なぜ、その人たちにはそれが当たり前なことになっているのだろう?

と何回か想像を重ねてみても無駄ではないように思います。
私だって、常識外のレベルに出会った時は最初そうでした。
今は自分が知らないだけで、世界には上には上があるのだと思えるようになりましたから。

最後に、お遊び問題を(笑

動画で紹介している膨張テープの端切れを昨日、住宅展示場と屋外に放置してみました。

窓周囲要膨張テープの端切れの画像

この時点で7mm程です。
これが膨張し切ると、5㎝ほどの厚さにまでになります。

膨張テープを住宅展示場にの画像

住宅展示場内室温 概ね19℃~20℃で推移

外気温は概ね平均0℃くらいでしょうか。

ここで問題です。

住宅展示場内と屋外、それぞれどのくらいの時間でテープは膨張し切るでしょうか?

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