温水床暖房の設定温度が「40℃ → 30℃ → 27℃」へ。なぜ低温のほうが家が暖まるのか?

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先日、室温等ヒアリングしていると、

冬場の室温は?
「室温は概ね22℃」

床暖房の設定温度は?
「最低の25℃くらいかな、瞬間的に30℃設定にすることはありますけど」

床暖房の温水設定が年々“低く”なっている理由

以前の床暖房は、
40℃前後の高温水が一般的でした。

それが近年では、社内でこんな声を聞くようになっていました。

「30℃台半ばくらいで十分暖まっているようです」

ここまではトリプルガラスのドイツサッシも一般化したし、特許の窓周囲熱橋対策で断熱性も向上しているからだろう。

なんてことを要因として推測していましたが・・・

そこに、25℃台で?一時的に30℃設定したことはある?一時的に?・・
私的には、何が起きてるんだ!?てな驚き。

ここまで暖房設定温度が下がっているのに、
むしろ家は以前より暖かい。
その理由を知りたくて、お願いして今回お施主様邸を訪問させていただきました。

実際にお伺いした施主邸の温水設定温度は“27℃”

温水設定温度の確認

先ず、暖房温水設定温度です。

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お施主様邸の床暖房設定温度は 27℃。
従来なら「低すぎて暖まらない」と思われていた温度です。

しかし実際の室内は、
室温 22℃以上、湿度は40%台ほど。
冬としては理想的というより、それ以上にしっとりとした暖かさが肌にまとわりつく感じは先日お伺いし1時間程滞在したお宅と同じです。

ヘッダー(分岐部)で温水の状態を確認

供給温度と戻り温度の確認

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床暖房の“心臓部”とも言えるヘッダー部分。
ここでは、各ループへ流れる温度と戻り温度がわかります。

27℃という低温設定でも、
床全体がしっかり暖まっているのが確認できました。
ここでの温度差は秘密です(笑

施主邸とモデルハウスの床面温度を比較

施主邸の床面温度は「22.8℃」

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サーモカメラで測定した床表面温度は 22.8℃。
足裏が冷たく感じない、熱くもない快適な床面温度です。

モデルハウスの床面温度は「23.8℃」

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モデルハウスの床は 23.8℃ と、施主邸より1℃高い温度でした。
ただし、室温は 20℃前後 と施主邸より2℃低い状態です。

モデルハウスは生活熱が“ゼロ”

モデルハウスは無人で暮らしの熱が無いため、

人の体温

家電の発熱

調理や入浴の熱

などの“生活熱”が加算されず、室温が上がりにくくなります。

したがって、床が暖かくても室温が低めになるのは自然な現象です。

温水設定温度の違いと床温の関係

施主邸とモデルハウスの比較

項目 施主邸     モデルハウス
温水設定温度 27℃    33℃
床面温度 22.8℃     23.8℃
室温 22℃〜      20℃前後
生活熱 あり       なし

モデルハウスの方が床温が高いのは、
温水設定が 5℃高いため当然の結果です。

しかし室温は施主邸の方が高い。
この要因と思える7割はヘッダー部のサーモ画像で想定することができます。

なぜ最近「低温設定でも暖かい家」が増えているのか?

理由① UA値(断熱性能)が大幅に向上

一般に断熱性の表す単位としてUA値が目安となっています。これはあくまで計算値です。
計算値のUA値はそれほど変わっていません。計算値には表れないUA値が存在します。
これを実質断熱性能と私は呼んでいます。

例え計算されなくても、実質の性能値がそれ以上であれば良いのだから、それでいい。
実際の性能優先でしょ。

と常々思って施工法など工夫配慮してきましたが、もしそれが顕在化してきたとすれば嬉しい話です。

小さな配慮の積み重ねで、

さらに熱が逃げにくい=低温の熱源でも家が暖まる

理想でしょ。

理由② 窓周囲の熱橋対策効果は予想以上かも

日本では当たり前のように見過ごされている窓周囲のヒートブリッジ(線状熱損失)。これをゼロにすること、更に窓のガラスより性能の劣るサッシ樹脂枠の断熱性能も向上する点は大きいのかもしれません。その結果が床暖房の設定温度低下になったとしたら嬉しいですよね。

「25〜30℃でも暖まる家」の将来性

今回の実測により可能性が拡がりました。この冬もっと多くのお宅のデータを確認し確信できるようにしたいものです。

40℃が当たり前だった時代はすでに終わり

30℃台前半が一般化

25〜30℃で暖まる家が増加

実例:施主邸は“27℃で室温22℃以上”を達成

30℃以下で暖房が可能となれば、何が期待できるかというと、冬のソーラー温水でも暖房が可能な領域になるということになります。まだ量的な問題はありますけど。

高性能住宅では床暖房は“27℃で暖まる”時代へ

今回の実測結果をまとめると、

温水設定 27℃

床温 22.8℃

室温 22℃以上

生活熱と断熱性能により非常に快適

高性能住宅では、高温水はもう不要ということ。

むしろ、低温のほうが

電気代が安い

空気が乾燥しにくい

足元がじんわり暖かい

というメリットが大きくなります。

嬉しいことに、床暖房性能は実際の家の方がモデルハウスを超えてしまっていますが、
もし、床暖房に不安を感じている方は、
当社住宅展示場で“低温なのに暖かい”肌感覚をぜひ体感してみてください。