最近の、
なぜ実験棟では同じ場所、定点での測定結果の値がぶれるのか?
その原因は、室内空気の対流でした。
住宅の断熱性能U値を計算する際には、壁だったら壁に使われている断熱材や木材、内外建材などの熱抵抗値を計算しますが、それに加えて住宅内外の空気に触れる面の熱伝達抵抗を加えて計算されます。
熱伝達抵抗値は計算上で定数であるため、これまで気にも留めなかったのですが、実測となると空気の動きは違ってきます。空気の動きである対流によって、通過熱流量、熱損失量は変わってしまうのです。
先日見学会をさせて頂いた住宅の中から、見える北上川の流れ、
川の水の流れ、これも流体だよなあ。
勢いよく流れる筋もあれば、ゆっくりと巻く流れもある。
これは空気も同じで、今回、実験棟内だからこそ起こったし、気付けたことと言えるのかもしれません。
2月末に測定したデータの変動は、性能のよい数値と悪い数値に極端な開きが出ました。
その性能値差は5倍もです。その数値が悪い方向へと急激に変化したのは、夜1時半頃から・・・
何があったのだろう?
と、実験棟の温度推移をチェックしてみると、
下降線だった室温は、1時過ぎ頃から上昇しています。
なぜ? だ?
暖房をお願いしていたスタッフに確認すると、
この時はファンヒーターが動くようにタイマーセットしてした時間だと言います。
そっかあ! こりゃ、送風だべ。
送風の対流で熱損失量が多くなったんだべさ。
ファンヒーターは一番暖房能力のあるタイプなので、送風量が大きすぎたのだと考えました。
ならば・・・ 送風量の小さいセラミックヒーターなら大丈夫だべ。と思い、翌日はファンヒーターに替えてもらいました。
しかし、翌日はデータ切れ。
そしてその翌日のデータの取れていましたが、なぜかセラミックヒータ―は夜11時にはOFFになった様子が室温の推移から分かりました。原因は電源の過熱していたからかもしれません。
データから変動幅は小さくなっているものの、やはりセラミックヒーターの送風でもだめなのだと。
いずれ送風の暖房方式では熱損失量が大きくなるのだとしたら、暖房は輻射方式しかないと思い、オールヒータ―を用意することにしました。電源の過熱が心配だったので、別場所の実験棟の温度計の一つを電源の温度チェック用にこの実験棟に移動することにしました。
緑が電源の温度になります。
その後、電源温度をチェックしていると、一つの電源に負荷をかけないほうが良さそうなのでもう一つ電源を引き込んでもらい、オールヒータ―を2台にします。
すると、それなりに良い傾向の値になりました。とは言っても、まだ2倍以上開きが・・
輻射暖房なら大丈夫だと思ったのに、大丈夫じゃなかったのです(笑
話長くなりそうなので、結論から。
オイルヒーターから生まれる上昇気流のようです。
その後、いろいろ試した結果、やっと良い値を再現できたのがホットカーペットです。
当初疑問が生まれた際の良い数値(より低い値)を1とします。
以下の数値は概ねということで見てください。
ファンヒータ―だと 5
オイルヒーター1台 ヒーター温度70℃前後 4
オいるヒーター2台 ヒーター温度35℃前後 2.5
ホットカーペットとオイルヒーター 4
ホットカーペット1枚 1
ホットカーペット2枚 0.4
(※ホットカーペットの表面温度26℃前後)
分かってしまうと、なんのことはないです。スタッフに確認すると、初期ホットカーペットを抱き合わせで使用していたのです。
当初、室温を18℃以上に上げ、内外温度差をつくることだけ考えていました。
まさか、暖房方式でこれだけ違ってしまうなど、考えてもいませんでしたから。。
今まで分からなかった窓周囲にあるヒートブリッジの数値化を目的に始まった今回の実験棟での測定が、
温度差から生まれてしまう対流による性能値(熱伝達率)の違い、
そして、
実性能値を下げないために、低い温度で対流を起こしにくい暖房方式とは何なのか、
について、改めて気付かせてくれたような気がします。
輻射面積を広く、如何に低温で暖房するか、もう一度考えてみる必要があるかもしれません。
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