岩手で住宅に断熱材が採用されるようになった初期
岩手の住宅にグラスウール断熱材が壁に5㎝~10㎝入るようになった。
にもかかわらず、暖かさの恩恵はほとんど感じられなかったように思う。
そりぁそうだ。住宅に断熱材が入ったとしてもその住宅は隙間風だらけのままなのだから。
この当時の隙間の自然換気による暖房の熱損失は、住宅全体の熱損失量の50%を超えると言われていた。
その状況で大きな問題になったのが、壁体内結露による住宅の構造内部の劣化。
→この解決策として、外壁通気工法と合わせて通気工法用シージングボードが登場することに。
岩手の住宅は高気密化へ
北海道を発信地として住宅の隙間を無くすべく高気密化が提唱され、壁内部室内側に壁への湿気の侵入を防ぐ目的も併せ持つ気密シート施工が登場し、気密シート継ぎ目のテーピングやコンセントボックスの気密化、そして防湿層の連続性を確保するための先張りシート施工などが登場するようになる。
住宅の高気密化で顕在化した弱点となる窓
住宅の隙間を無くして隙間はゼロと言って良いレベル住宅も可能になってくると、住宅全体の中で窓の熱損失割合は増え、窓が占める損失は50%前後に。
この状態だと、隙間風で逃げていた湿気の行き場は窓に集中し、窓結露は増大した。
この頃、岩手の住宅は計画換気と全館暖房の重要視する流れと合わせて、窓枠はアルミやアルミ複合から樹脂へ、開閉も縦辷りへと移行し始めた。
そのような岩手の住宅の移り変わりのなかで、初めての海外、アメリカの住宅を視察する機会を得る。
初めてのアメリカの住宅視察
見るもの触れるもの全てが殆ど知らないものばかり。まるで異次元の世界の住宅。かけ離れ過ぎててとても同じように日本でできる気さえしなかった。
それが初めてのアメリカ住宅視察で親しくなった方から再度の渡米のお誘いで2度目のアメリカ視察。
工事現場で、完成現場で、ホームセンターで
これ、いいよね。
こういうサッシ、こういうドア、こういう階段材、外壁材を、
もしさ、これをこのまま輸入できたらアメリカと同じレベルの住宅はできるんじゃない?
こんな何気ない会話から勢い、輸入するための現地法人を共同出資で設立することになってしまったのだ。
今思えば、世の中を知らないってある意味恐ろしい(笑
岩手の弱小工務店が、直輸入って・・・
大変なことなのだと後からわかったけど後の祭り、それはまたの機会にでも。
アメリカに何度も足を運び、住宅を観ては刺激を受ける。この住宅のなかに感じるデザイン要素は何なのか。素材は何か。そういうものを拾い上げて行く。
例えば、外観の要素として外構素材を拾うと、
これと同じような素材、次のコンテナに入れれるかなあ。
一度試してみたいので。
サンプル的に輸入してみたり。
例えば、アメリカの階段なら、
手すりレール、小柱、下部レールの納め部材などをチェックして、
これ価格がどれくらいなものか知りたいよね。
価格的に良さそうなら、岩手の住宅で標準化してもいいかもしれないし。
アメリカの冷暖房システム
どこに居ても暖かい、涼しいは当たり前のアメリカの全館冷暖房システム。
冷暖房感をまったく感じさせない。送風音も送風感もない、そしてインテリアを損なわない。
写真の福出し口に手を当ててやっとわかるくらいの送風に、
これはぜひ試してみたいよね。
てことになるわけ。
そしてこのアメリカの冷暖房システムの調査で3回渡米して確認しメーカーを選定、輸入した。ちなみに私の家もこのアメリカの冷暖房システム。
当社住宅展示場に採用している地中熱利用(ジオサーマル)採用
に当たっては事前調査で6回渡米。こんなに多くなってしまったのは地中のボーリングコストが日本7:米国1だったので。そのコスト差の要因を知るために2回だったかな?
アメリカから輸入するものを徐々に増やしながら併せてアメリカの持つ住宅技術の情報収集に努めた。
サッシの高断熱化を目指していた当時、結果として日本ではなかったLow-Eガラスやトリプルガラスサッシも北米から輸入するようになったし。日本に居るだけなら知ることのできない素材や技術が世界にはあるんだ!てことを教えてくれたのはアメリカだった。
そう、アメリカから住宅のことを教わることかれこれ十数年。
当社が岩手で提供しようとする住宅は、外張り断熱から複層断熱構造へ、
そして、震災後の国産サッシのトリプルガラス化への流れもあり、住宅業界全体で更なる高断熱化への意識は高まりつつある中、世界の住宅への興味はヨーロッパへとシフトした。
取っ掛かりはスウェーデンの高断熱住宅、
そして調べていくうちにドイツの高断熱住宅へ。
住宅展示場を観て回り、デザインや断熱スペックでモチベーションUP(笑
見たことのない中空断熱層を含む断熱壁は、当社の倍はあるだろうか。
住宅の断熱に対する考え方に圧倒されたなあ。
ヨーロッパ最大の建築見本市 BAU
初めて訪れた際は、見るものすべて驚きの連続。
ペアガラスはあるけど、トリプルガラスが当り前の世界に加え多彩な機能の組み合わせもある。
40年くらいで窓の交換を考えるドイツでは高気密・高断熱でリサイクルまで考えられた高機能な窓周囲部材。
これは当社最高の断熱シリーズに採用されるようになっている。
輸入窓は木製サッシから樹脂サッシへ
ドイツのサッシ工場視察。
ドバイの建築建材展視察
旺盛な経済成長を続けるドバイに世界の最新技術が集まるという話を聴きドバイへも足を運んだ。
これがドバイの一戸建て住宅。
ドバイにも木製枠の断熱付加された高断熱なアルミクラッド木製トリプルガラスを見て、世界は極寒地だろうが極暑地だろうが高断熱は欠かせないのだと認識。
スペインでの建築見本市
温暖なスペインであってもやはり高断熱な樹脂トリプルガラスUw0.79はおススメらしい。
高断熱サッシのみならず、ブロック積みのスペイン住宅にウレタンの外張り断熱2層張り、それも2層で20㎝はある。
温暖地であれ、世界の断熱はここまで進んでいる。
北欧だから北国だから断熱は必要だ!というわけではなかったのだ。
こういうのを世界で見せつけられ、日本ももっと意識を高くしないとどれだけ世界から断熱レベルは遅れをとってしまうか・・
と思い日本に戻るも毎度のことながら、業界の議論と日本人の意識はヨーロッパとの雲泥の差に打ちのめされてしまう。
日本の断熱レベルに合わせてはいられない。うちらだけでも世界との差を埋めないと。
そんなスペインである転機が訪れる。
新たな道を開くヒントを得て商談が始まった。
フィンランドの住宅視察
長い冬、短い夏をどう過ごすか。ウィンターガーデンなどからヒントを得た。
フェノールフォーム2層張り。
フィンランドの住宅では窓の断熱性能を上げるために二重建具を採用しているケースは参考になった。
ペアガラス+ペアガラス。
トリプルガラス+シングルガラス。
トリプルガラス+ペアガラス
このアイデアはこれまで何回か採用してみて、日本の岩手ならトリプル+ペアが安心なのだということもわかった。
若手スタッフの3か月ドイツ研修
日本にないドイツの住宅技術やその周辺のノウハウを社内に落とし込む必要性を感じ、スタッフ二人を3か月間の研修に送り出し、いよいよ新たな領域へのチャレンジは始まった。
その4年後、次のステップへ。
ドイツからオーストリアウィーンを経由しての電車。目的地到着前既に移動疲れが。
初めての訪問地が無人駅。 一体ここはどこ?
チェックインしたホテルの翌朝の視界はまさに別世界。
何とも贅沢な視界。
そこに建つ住宅には初めてみる窓トリム。これは朝のご褒美かなと。
そして1番目の商談先へ。
こんな景色を脇に、商談は始まった。
商談を終え、次の商談先であるイタリアへ。
二つの商談先がどちらも有名な観光地。
これはあくまで偶然で、商談先を絞り行ってみた結果がこれなので(笑
商談を終え、夜はどちらを取引先として選ぶか、ほか確認すべきことはないかとミーティングしたが、そこでは意見が分かれ決定は帰国してからに。
スペインでの漆喰テスト
塗り壁の師匠が、
配分をいくつにも分けて試し塗りをする。翌朝に壊す。また配分を変えて塗りなおす。翌朝また壊す。
三日目くらいに、候補を絞り込みまた塗りなおす。4日目に最有力候補を再度塗り同じ結果が再現できるかを最終検証。
夜は陽気な現地の仲間たちとバルのはしごするのはいつもの定番。この時間が一番楽しいかな。
その他、スウェーデンやポーランド、チェコ、トルコからも輸入し、学ばせてもらったし沢山の掛け替えのない情報や刺激も貰った。
私たちの岩手での家づくりはまだまだ世界には及ばないのは分かっている。
でも岩手の住宅の高断熱化という点ではかなり近づいていると思うんだけど・・・
ま、手前みそな話だね(笑
これまで出会えた世界の住宅や素材、そこで先進技術を創り支え与えてくれた人たちに感謝したい。
さあ、この3年で世界の住宅はどう進化しているのか・・
なんて3年も世界に触れてないのに興味だけは尽きないのが不思議。(笑
楽しみにしましょうか!
次に出会った世界の住宅が新たなギャップを見せつけてくれるのを。
お~海外視察行きそうな雰囲気バリバリですね~!
いつだって機会があれば行く気バリバリですよ~!