これからの住宅性能は素材選びから窓熱橋対策などの施工選びへ

内付けサッシでの窓周囲ヒートブリッジ初確認の画像

実際に完成したリアルな家を見学していただけるのは概ね月に一回程のペースです。そして一年の中で私たちが最も大事にしている断熱の効果を確認したり体感していただけるのはほんの数か月数回しかないのが現実で、なかなか一年を通して理解してもらうことは難しい。

窓周囲熱橋対策施工の画像
この外壁より内側に取付されている窓の周囲には、ヒートブリッジ対策が施されています。見学会で説明したとしても対策施工の効果を誰も実感できないはずです。そりゃそうです、見えないのですから(笑

ですが知っている者としては伝え続けなければなりません。今後重要視されるべきものにヒートブリッジというものがあり、このヒートブリッジ問題は遠からず顕在化するはずです。ここで時々取り上げることで一人でも多くの方に知ってもらえたらと思うのです。

1. ヒートブリッジとは?

ヒートブリッジとは、建物の外皮を通して熱が逃げやすい部分のことを指します。特にトリプルガラスの窓周りは、断熱性の低いサッシ枠と高断熱の外周壁が接する場所なので、ヒートブリッジが発生しやすくなります。下の図のように、サッシ枠よりも窓周りの温度が低下し、結露が生じやすくなるのです。

内付けサッシでの窓周囲ヒートブリッジ初確認の画像

2. ヒートブリッジによる影響

これまでこの問題になぜ気付けなかったのか?

それはサッシ枠の性能が低かったので熱カメラでもサッシ枠が冷えていたのでわかり辛かったということになります。ここ十年高断熱サッシ樹脂枠は複層化サッシ枠の断熱性能は向上しました。ですが、施工方法は変わっていないことから窓周囲にあるリスクはそのままというのが一般的な状況となっています。そのことから起こり得る問題について考えてみます。

(1) 結露リスクの増大

窓周りの表面温度が低下すると、そこに水蒸気が凝縮し、結露が発生しやすくなります。結露があると、カビや木材の腐朽、壁紙や床材の変色など、建物に様々な悪影響が及ぶリスクが高まります。特に目に見えない外壁内部での夏型結露の方がリスクが高いと思われます。

(2) 暖房負荷の増加

ヒートブリッジから熱が逃げると、その分だけ暖房の負荷が増え、エネルギー損失が大きくなります。高断熱住宅ほど、ヒートブリッジによる影響が顕著になります。

窓周囲のヒートブリッジの熱損失の影響についてご興味があれば以下の記事で確認してください。

高断熱サッシとトリプルガラスの真実:知られざる性能の落とし穴

 

3. 日本の一般的な樹脂サッシの問題点

日本で一般的な半外付けの樹脂サッシは、次のような理由から、ヒートブリッジ対策が不十分です。

半外付けサッシの窓周囲ヒートブリッジの画像

(1) 窓枠の熱損失が大きい

高断熱樹脂サッシの殆どは半外付けサッシであること。窓枠そのものの断熱性能もヨーロッパと比較して低いため、窓枠を通しての熱損失が大きくなります。

(2) 壁と窓枠の接合部にヒートブリッジが発生

壁の断熱材が窓枠の内側まで届いていないため、壁と窓枠の接合部分でヒートブリッジが生じます。
これを線状熱損失ψinstallとしてドイツなのでは重視しています。

4. パッシブハウスの基準と重要性

ドイツのパッシブハウス基準では、優れたヒートブリッジ対策が義務付けられています。具体的には、ヒートブリッジ係数ψinstallの値が0.01W/(m・K)以下であることが求められています。この値を満たすためには、窓枠の高断熱化と壁との接合部の徹底したヒートブリッジ対策が不可欠になります。

パッシブハウスでは、ヒートブリッジ対策が重視される理由は、以下の2点があげられます。

(1) 極めて高い断熱性能が求められるため

パッシブハウスでは、年間の暖房負荷を15kWh/m²以下に抑えることが求められます。そのため、ヒートブリッジによる熱損失を最小限に抑える必要があります。

(2) 結露リスクを回避するため

高断熱住宅では内外の温度差が大きくなり、結露リスクが高まります。そのため、窓周りなどの外皮全体で結露が生じないよう、適切なヒートブリッジ対策が欠かせません。

5. 窓周りのヒートブリッジ対策例

窓周りのヒートブリッジを低減するには、以下のような対策が有効です。

下の当社施工写真のように、外張り断熱層をサッシ枠まで伸ばすことで、ヒートブリッジを軽減し、且つ同時にサッシ枠の断熱性も向上させることができます。

窓周囲ヒートブリッジ対策施工の画像

(1) 高断熱窓枠の採用

プラスチック製の高断熱窓枠や、木製窓枠の内側に断熱材を入れるなどして、窓枠自体の断熱性を高めます。

(2) 窓枠と壁の接合部の断熱

窓枠の内側まで断熱材が届くようにし、ヒートブリッジが生じないよう徹底的に断熱処理をします。必要に応じて、窓枠と壁の間に断熱材を詰めたり、断熱性能のある膨張テープを設置したりします。

(3) 窓枠の設置位置で断熱性能は変わる

窓枠を壁断熱層内の内側や外側に調整することでもヒートブリッジを低減できます。特に断熱層内外側設置が有効です。

このようなヒートブリッジ対策を行うことで、結露リスクを低減し、暖房負荷の削減にもつながります。高断熱住宅では、適切なヒートブリッジ対策が不可欠なのです。

6. ヒートブリッジ対策の重要性

ヒートブリッジ対策は、高断熱住宅を実現する上で極めて重要な役割を果たします。例えば、ある一般的な木造住宅でヒートブリッジ対策を施さなかった場合、窓周りから年間約30%の熱が逃げてしまうと試算されています。

一方、適切なヒートブリッジ対策を行えば、結露リスクを大幅に低減できます。下のサーモカメラ画像はヒートブリッジ対策の有無による窓周りの表面温度の違いを示したものです。ヒートブリッジ対策を行わなかった場合(左)と、適切な対策を施した場合(右)では、表面温度が大きく異なることがわかります。

高断熱住宅の窓周囲熱橋対策有無の比較の画像

ヒートブリッジ対策を怠ると、窓周りで結露が生じ、カビや木材の腐朽などのリスクが高くなってしまいます。しっかりとしたヒートブリッジ対策は、高断熱住宅を快適に永く保つ上で必須なのです。

このように、窓周りのヒートブリッジ対策は、高断熱住宅における重要な課題です。パッシブハウスの基準にも反映されているように、優れたヒートブリッジ対策が施されていることが、高性能住宅を実現する上で欠かせない要件となっています。

ご興味のある方は、下記の窓周囲のヒートブリッジ関連記事をご確認ください。
(重複する部分は多いですが^^;)

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