タクシー

馴染みの焼き鳥屋でのこと。
飲み終え勘定を済ませた3人のサラリーマンさんたち。
上機嫌?に明日への気勢を発しながらお店を出た。

ほどなく、帰ったかに思われたサラリーマンさんの一人が
お店の入口に顔を出し、

タクシー1台頼んでちょうだい!

 ああ、いいよぉ。
 中に入って座って待ってて。
 (スタッフがマスターのアイコンで電話をかける)

申し訳ないからいいです、外で待ってますので。

 まぁず、みんな中さ入ってゆっくり待ってでけで。

いや、大丈夫です!

そう言って入口を離れて行った。
すると、作業をしながらマスターがぼそっとつぶやいた。

 大丈夫じゃないがらさあって言ってんのに。

私はこの時マスターが、
表で怪我でもされたらと心配しているのだと思った。

ほんの少しの間、かすかに聞こえていた外の会話が、
バタンの音とともに消えた。
するとマスターが空かさず発した。

 ほら、言ったこっちゃねぇ。
 大丈夫じゃないんだから。

??ここで初めて私はマスターに聞き、勘違いしていたことを知った。
表でタクシー拾えなくて店に頼んでくるんだけど、
店に頼んでいながら、頼んでいるタクシーが来る前に、
流しのタクシーに乗ってしまうらしい。

だから、「大丈夫じゃない」ってのは、

頼まれたお店とタクシーのことだった。

マスター曰く、

 いつものことだからさ、大したことじゃないんだけどさぁ。

と、止まらない手作業の中にちょっとだけ寂しさを見せた。

岩手の注文住宅なら。

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