船箪笥と桶風呂

先日、新幹線座席に備えられているJRの旅本。(名前忘れた。。)
能登の特集で豪農「時国家」を紹介し、豪農でありながら
実はその莫大な収入は北前船という日本海の貿易船だった。
とか何とか。。

そのままずっと読み流していると、
小さな写真で紹介されていた船箪笥に目が止まる。
船箪笥?
桐でできた金庫のようなもの。
遭難した時、桐が水を吸い込み気密性が上がり
中の物を濡らさずに守る、んだとか。

これってログハウスと同じく木の特性を活かす知恵だ。
今の木造住宅は果してこのように木の特性を活かしているだろうか。
考えてみれば、特性を修正する技術は発達したが
活かす技術を私も業界全体も忘れかけていないだろうか・・・

私の子どもの頃風呂場にあったヒバでできた桶風呂。
(当時風呂場は別小屋に。40W電球一個で小っ暗真っ暗した場所)
自分が最後に入った後、気を利かしたつもりでお湯を抜くと親に怒られた。
風呂が乾くと木は縮み桶が水漏れしたり壊れたりするからだ。

水を抜いたら風呂を洗い、すぐまた新たに水を張るなければならない。
ほとんど、水を吸い込み放しの木の風呂桶は5~6年で替えることになる。

その度におふくろは
「どうする?今度こそ長持ちするステンレスに替えっぺが?」
と聞いてくれたが、いつも私の答えは決まっていた。
「おんなずのがいい」
このあとお袋は困った顔をしながら言うことは決まっている。
「もう中々桶つぐってるどこもねえんだがら・・・」とぶつぶつ。
わがままな息子だった。

本家の風呂がずっと早くに桶からステンレスに替わっていた。
当時田舎では「衛生的で明るい文化的な風呂」のイメージ。
初めて文化的な風呂のお湯を借りた時、子ども心に
妙にお湯が痛かった気がした。
「やっぱり木の風呂がいい」そう思った。

その時の思いが、桶の寿命の度に私をわがままにさせ続けたのだ。

そのわがままも私が大学時期に終わりとなった。
帰省するといつの間にか壁にはタイルが貼られ、
桶はステンレスで明るい浴室になっていた。

そこはもうあの風呂場ではない、文化的な浴室。
「やられたあ!」と思いもしたが、何も言わなかった。
一人暮らしのおふくろには薪がガスボイラーに替わり、
もう火加減をみる必要もないのだから。

そんな桶風呂のことなど思い出しながら
桶風呂は木の特性に水の力で水を漏らさぬ知恵。
船箪笥は桐の特性に水の力で水を入れぬ知恵。

そして住宅は。。
普段木を使って家を建てているくせに木のホントをどれだけ
知っている?活かしている?と自問。

木の特性を活かし、許容しながら使いこなす、住まいこなす。

そんな知恵を持ちたい。

   ※船箪笥はこちらがわかりいい

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